2004年9月11日 -T.S.S.T.第4戦-
メディアに氾濫するありきたりの愛なんかではない。
確かに、間違いなく本物の愛がそこにあった。
愛のために、こうも人は強くなれるのかと。
そして、一つの人生の終わりを、僕は奥歯を噛み締めながら見ていた。
口の中ににわかに血の味が広がった時、そこにあった願いも、愛も、全て無垢となった。
形あるものは何も残らなかったけど、かけがえのない何かがきっとそれぞれの心に残るんだろう。
この涙の味は生涯忘れない。
今の自分はここにいる。
望んだ形なのかどうかはわからない。
だけど、生まれてきてからのあらゆる選択肢の結果、ここにいるのだ。
楽な方へと逃げた時もあったし、歯を食いしばって辛い方を選んで立ち向かったこともあった。
選ぶことさえ放棄した時もあった。
それでも、その全ての結果として、今ここにいるのだ。
それは誰だって変わらない。
現状のあり方を嘆くのなら、その現状への道のりを選んできた自分自身を嘆くことだ。
トーナメントという気分でも無かったが、一区切りつけたい気持ちだけで参戦したTSST第4戦。
魚は見えていた。行かなくても選ぶべきポイントはわかるし、釣ることのできる魚もある。
だから果敢にその上を狙うプラクティスをやって、その結果はノーフィッシュ。
最後に、荒川筋で40センチ級を2本のみで終わる。
やはり正攻法でやるしかないのか。
そんな閉塞感すら感じたプラクティス。
川筋が調子良くて港湾部の調子が良くない状況。
だけど、川筋は下げ時合に活性が高まっている状況。
しかし、この日はスタート直後に干潮を迎え、その後はダラダラと上げない上げ潮が朝方まで続き、
下げだしたと思ったら夜明けを迎えるという最悪の形の日である。
とりあえずは下げ残りを狙って、スタート直後は荒川筋へと入る。
最初の橋は先行者がいて、次の橋も先行者がいる。
先行者だけは自分の力ではどうにもならない。
そこに運という要素が加わっているのが、いらだたしい。
前のAreaで一つの新しい概念に挑んでいるが、それも見えかけてまた見失った形。
嘆いたって何も始まらない。
3番目の四つ木周辺の橋でようやく明暗ポジションをゲット。
さっそく、ミノーで攻めるがもう流れもほとんどない。
反応も無かったけど、ブルーコーストのボトムデッドスローにヒット。
45cm。川の中だけど、港湾部の魚です。
大きな川の中には、港湾部の避難組と、川が生業の川スズキの2つがいる。
サイズがいい川スズキをいかに狙っていくかが重要だ。
車に戻って考える。
トーナメントをするか、一つの挑戦をするか、だった。
トーナメントなら、上げで食いが立つ港湾部。挑戦なら見えない十字という新しい概念に挑んでみる形。
結果として、挑戦することを選んだ。
車を北へと走らせる。
見えない要素の交差点。
きっと色々とあるのだろうけど、今の自分に見えているのはまだ流れを使った形だけだ。
その流れが止まってしまう今日の潮周り。だったら、潮の関係ないところまで川をあがろう。
そんなことで、川を遡る。
どこまで行ったかは書かないが、走った距離なら今日の自分はきっと一番だろう。
堰周りのヨレの中で60センチ後半を一発掛けたが、それをバラしてしまう。
そこから下りながら3カ所ほど回るが、水門が閉まっていたり、電気が消えていたりと、
まるでツキのない展開で今日の負けを覚悟せざるを得ない状況になっちまった。
午前3時の段階で1本だけ。残り3時間半。
久々に地図を広げて必死に考えた。
潮が動かない。動くタイミングで夜明けを迎える。
どこに行けばいい?
考えたが、答えが出ない。
とりあえず車を走らせる。ここは遠く離れているのでとりあえずは湾奥へ戻らなければ。
車を走らせている最中もずっと思い出そうとしていた。
前はこの形で得意なパターンがあったはずなのである。
それがどうしても思い出せない。
しかし、首都高から見えたある看板を見た瞬間に、突然思い出した。
人間の記憶ってつくづく面白い。看板とその釣りは全く関係ないのだが、
説明するのもくだらないある理由で脳の中ではつながっていたのである。
それはこのタイミングで潮が動くところであった。
とある水門が閉まり、そして開く時間の1時間前だけ、ある場所でそれなりに押しの強い流れが出る。
そこに行った。
ポイントに着くと、その期待感は外れたが、潮が動きだす気配とともに派手なセイゴのライズと、
ベイトが水面を騒がす状況が迎えてくれた。
まずはセイゴでもいいからリミットメイクを狙おう。
一投目からいきなりNJ-85にヒットするが、バラしてしまう。
気を取り直した3投目にヒット。
ちょうど50センチ
ポイントの状況はかなりいい感じだ。
場荒れに細心の注意を払って、手前の魚から獲りに行く。
彼らが保持するフィーディングゾーンの少し外側ギリギリを、X-80SWのジャークで誘い出す。
ゾーンを越える覚悟を持った魚から喰ってくる。
38センチ。とりあえずリミット達成。
焦らずにじっくりと誘う。
魚はルアーを追ってないのでスレない。
だけど、波動だけはきちんと伝わっているはずなのだ。
その波動をジャークで凄まじく変化させて慣れさせない。
これは35センチくらい
10投したら、プラグを変える。
ラパラCDに変える。誘い方は全く一緒。
警戒心なく魚が動くアクティブゾーンの内側、かつフィーディングゾーンの外側。
このゾーンは光の量と水の透明度で決まる。
長年の経験がものを言う世界だ。
52センチ。サイズアップ。
やがて流れがぐんと押し出される形になってきた。
川の流れとかとまた違う。密度の薄い流れ。
だけど、今の時間、もっとも潮が効いている場所の一つであろう。
ヨルクルで51センチ。これも入れ替え。トータル154センチに。
ヨルクルは水面直下でバジング気味に引くことができる。
水面にブレードの回転の波紋を残しながら引くと、ワンキャスト絶対ヒットの状況。
だけど、サイズが出ない。4本ほど釣ったところでこれはやめる。
大きなサイズは下にいると読む。
ベイスラッグに変える。
少しアップクロスにキャストして、しっかりとラインとプラグを沈めてからスロージャークで誘う。
52センチ。少しサイズアップ。
だけど、釣ってる魚は変わらない。
おそらく低層の潮の押しが強いのかもしれない。
もっと沈めようとヨレヨレにチェンジ。
流れの中にあるボトムの一点に流し込んでいくイメージでデッドスローで誘う。
水深は5mほどである。
サイズアップにならない1本。いきなり一発目でこの魚が出た時に悩んだ。
それでも押し通す。
フッコクラスが邪魔をするなら全て釣ってやろう、と。
いちどボトムに着けて、そこから弱いながらも流れに乗ってふわーっとデッドスローで浮き上がるアクションがどハマり。
53センチ。サイズアップ
色々と変えたが、他のプラグにするとサイズダウンどころか、バイトも出ない状態に。
水面直下のヨルクルだけは相変わらずセイゴを狂わせる。
ボトムからハゼか手長エビが浮き上がるイメージで攻めると、来るべき場所でコツッと小さなショートバイトが出る。
どっちの魚も港湾部の魚だ。なぜここに集まっているのかは未だにわからないが、毎年そうなんである。
久々に指先の神経がルアーのフックの先端まで届く感じになった。
一挙一足の動きをコントロールしてシーバスを誘う。
1投に2分ほど。5投に一発のペースでショートバイトが出る。
サイズアップに確信を持った52センチ。
サイズアップにはならなかったが、この魚が出たことで、スズキ級もいることが確信できたのだ。
こいつは小さかった。
同じく。辛抱である。この辺から川フッコが混じり出す。
そして、いよいよ夜明け寸前。東の空がゆっくりと明るくなってきている。
その中で焦らずにボトムをスローに誘う。
ヨレヨレを頭から飲み込んだ60センチジャスト、港湾系だったけど、スズキ級が出ると信じ続けた1本。うれし。
立て続けに出た55センチ。
これで168センチ。
この後は明るくなってきて、魚を何本か掛けるもサイズアップはできなかった。
結果は準優勝。
結局、このポイントではセイゴ合わせて30本近く掛けた。
自分の中では一番得意なパターン。
革新的な釣りがまるでなかったので、興奮も何も無かったが、まあ結果だけ見れば十分だ。
区切りの一つとして上出来としておこう。
ちなみに優勝は大野ゆうき。
開会式であげたヨルクルで川スズキを揃えて優勝である。
あげなきゃ良かった。
使用タックル |
ロッド |
アピア 風神ゼータ83Lネオンナイト |
リール |
シマノ ステラ3000AR |
ライン |
東レ シーバスPE 1号 |
プラグ |
邪道 ヨレヨレ〜
メガバス X-80SW |
ゴミ |
空き缶 |
|