Area3 - Stage3 〜 そして最終章 〜
2000年11月20日 港湾部シーバス
最近思うこと。
ウェーディングをしている最中にふと思う。
シーバスの持つ魚眼レンズで見える僕らってどんな風に写るんだろう。
なんとなく顔を水面に近づけてみる。
流れ、ベイト、水面と平行に見ると色々なものが見えてくる。
そして人影。湾奥の明るい夜空をバックに人は黒く得体の知れない動物に見えた。
20日の強い寒波と雨で湾奥の魚が一斉に落ちた様だ。
落ちた様は21日にさりげなく僕とGOROさんで確認してきた。
新木場でホゲリ、川崎でホゲリ、有明と青海でもホゲって、結局8時間やってセイゴのバイト2回のみというスーパーホゲダルマ。
最後は北風吹き荒れる川崎で、GOROさん特製のクラムチャウダーをすすって雑談してしまうほど、魚の気配がなかった。
ところが、全部の魚が一斉に落ちるかというともちろんそんなことはない。
残る魚もいるのだ。それが極小組と巨大組。もちろん極小に用はない。
狙うはまだ食い足りないのか、荒々しさ一杯のランカー組だ。
彼らを狙う際、うるさい60クラスがいないのは助かる。
(実際はちょっと寂しいんだけど・・・)
そして残った彼らはどこにいるのか。
広い湾奥でそれを絞りこまなくては魚に会うことすら難しい。
それを20日に痛感して、結局秋シーズンの走りで好調だった多摩川に狙いを定めた。
またもやウェーディングである。
僕が今年夢中になったのがウェーディングで狙う超シャローのシーバスだった。今までそういったパターンがあることは知っていたが、魚を出せるところまで行き着けなかった魚。回遊待ちの釣りではない。流れのあるところにある膝くらいしかない水深のストラクチャーについたシーバス。そいつらはデカイのだ。去年までは考えづらかったことだが、今年になって湾奥で80upを7尾も獲ってしまうのは決して運が良かったわけでも僕が上手になったわけでもない。そういうポイントに行くようになり、そこの魚の食わせ方を覚えたからに他ならない。
そこで湾奥の中でも落ち始めの魚が溜まっていると読んだ多摩川下流域。
そこならまだ結構いけるんではないか。
そんなことで21日に釣行。ポイントは某工場前。光が無い真っ暗なエリアの一つだ。そこのシャローに魚がいないはずはないのだが、今まで大した釣果が上がらなかった。そこで潮位の高い時間からスーパーウェーディングをして川の中から岸近くのシャローを撃つ。
これは端から見るとちょっとアホっぽいが、ご存じの通り、魚は流心を泳ぐ訳ではない。潮位が上がると共に魚は岸を目指す。
岸に人影が動かなければシーバスは背鰭の出るような水深まで上がってくる。この魚は岸からでは獲れない。岸に人影が出た瞬間にはさっさと逃げていってしまうだろう。だから川の中側から狙うのだ。
この際に気を付けないといけないのが、自分の影。ちょうど羽田空港の各ビルや道路の明かりを背負う格好になるので、相当に気を付けないと魚は出ないようだ。
まともに立った姿勢でそういったポイントに近づくと魚は逃げていってしまう。そう、しゃがんだり寝そべったりするぐらいの低い姿勢でアプローチしないとダメなのだ。
特に旧江戸川のようにディズニーランドという明るい設備と花火というまたやっかいなもんがあるエリアはその傾向が顕著だった。要するに朝日や夕日の時の長く伸びる影と一緒。これを夜の湾奥でも忘れてはならない。葛西ではアサヒビールの看板を背負ったらダメ、青海では観覧車を背負ったらダメなのだ。(あくまでシャローの魚を狙う場合はね)
広大なシャローを持つ多摩川の暗いシャロー、そして複雑な流れを作り出す中洲の要素が重なる地点に僕は立ち込んだ。
開始して30分ほどで60センチ級が2尾ばかし。
最近のマイブームで流れのヨレを利用したメソッドを開発している。
地形的変化で激しく水が落ち込むところ、当たるところ、流れの変化があるところなどにシーバスは集まる性質がある。その中でもブレイクに滝のように落ち込むような流れは凄まじいまでの集魚力を持っている。これに違和感の無い浮力を持ったルアーをプレゼンすることで多くの魚のバイトを得ることができるのだ。
今日の潮の流れでは特にバンザイのシープがうまい具合に流れのヨレにはまっていた感じだった。50クラスはうまく吸い込めずに水柱だけで終わってしまうので、シープの浮力でスズキサイズを選んでいく展開。やがて潮が一気に動きだしてシープですらも流れに飲み込まれる展開になってきた。その飲み込まれ方が激しくバランスを崩すようでもダメだし、浮力がきつすぎてもいまいちバイトが出せない。この釣りをやる多くの人がハンドメイドのルアーに挑戦する理由がよく判る。それぞれの流れの速さや強さによってベストなルアーが存在する。
シープできつくなってきたので、ハンマーにチェンジする。しかし、両者の浮力の開きは大きい。まだ浮力が大きいこともあって、60センチ級がバイトするもののフックに乗らない。そこで再度シープにチェンジ。流れのヨレに飲み込まれてバランスを崩す瞬間にテンションを抜いてなんとかアクションを保ちつつ流していく。そんな苦しいゲームを20分ほどやっていた瞬間だった。
ズボーン!豪快な水柱が立ち上がる。反射的にロッドを立てると豪快なエラ洗いを出されてしまう。80UPは間違いない。あっさりとシャローに上がったのでドラグを緩めて慎重にファイト。岸まで一緒に歩いていってズリ上げた。
威風堂々の87センチ。
シープをガッチリとくわえていた。スズキがルアーを吸い込む力とルアーの浮力。難しいがこれほど面白いものもない。
ヨレに飲み込まれてもいけないし、逆らってもいけない。あくまで弱った魚が流れに逆らいつつも流されていく様を演出できるか。あくまで水面直下、ヨレの中での激しい上下動がバイトを誘い出す。まだ自分の言葉になってないのでいまいちピントが合ってないかもしれないがこんな感じを僕は考えている。
そして、この一尾で僕の中でこのパターンが確信に変わったのだ。
23日はなんとなく根岸が良さそうだと考えて行ってみたが、思いっきりセイゴ2尾に終わった。
そして24日。タイミングを計っていたが会社の仕事が終わるのが遅くなって時合に間に合いそうもなかったので家でタックルの準備。そこで金さんから電話があり、旧江戸に釣りに来ていたBEATSの三宅さんとファミレスで一緒に飯を喰うことに。
この時に僕は重大なヒントを三宅さんからもらうことができた。
ハンマーの強すぎる浮力は60センチでも吸い込ませたくないからそんな設定になっているのだと。
そうやって大きいサイズを選んで取るというミラクルワークスの考えは、経験不足な僕には正直想像もつかない世界だったけど、なんとなく理解できるレベルまではなってきたようだ。
それなら、そのハンマーですらも飲み込まれてしまう強烈な流れのヨレはどこかにないかと僕は後で考えていた。
そしてあった。旧江戸川。ソルストにウェーディングポイントがバッチリ記事になって出てしまったので人が多そうだけど、その地形的変化までは記事には書いていなかったので僕のポイントに人が入っていなければ出せると踏んだ。
そして強烈な流れが必要だ。久々にタイドグラフとにらめっこ。狙えるのは25日から27日までの大潮。しかし、時合の時間を考えるとディズニーランドの花火が上がった直後に時合が来る26日と27日は難しそう。そうなると、TSCの前夜の25日の晩しかチャンスがなかった。
そう思うといても立ってもいられずにポイントへ向かう。17時くらいからあっちをウロウロこっちをウロウロ。今日の満潮が16:02。下げ潮が最も早くなる時間は19:20〜19:40の20分間だ。
この間に潮位が50センチ近くも引く。この時にポイントまでウェーディングできたらどうだろうか、と考えていた。
下流の方に数人ほど人が見えたが僕のポイントは誰もいなかった。そこで18:30からポイントに入った。しばらくは水面の流れを眺めていた。まだハンマー13センチを引きずり込む流れではない。どうしようかと思ったが待つことにした。水の中に立ち込んだままボーっと考え事をする。
そこで考えていたのがArea3のことだった。T.S.S.T.でMAPSからすごいことを教わり、クロスロードで多くの人と出会って多くの話を聞かせてもらった。聞いて知識にするだけではもったいない話ばかりで僕はひたすら自分自身で結果を出して自分のものにしてきたのだ。
Area0。超弩級のランカーを狙い定めて獲る、神でしかできないような領域があったとしたら、僕はこの時ほど近くにいたことは今までになかった。おそらくいるであろう超弩級。けっして回遊待ちではない。回遊中にシャローエリアのストラクチャーに付くシーバス。ヘビカバは最後にここに辿り着いた。自分が橋の明かりを背負っていることも忘れてはいない。足を開いて低い姿勢で流れが速くなるのを持った。
19:15分キャスト開始。
ハンマー13ですらもまともに流れをもらってダートしそうになりながら泳ぐ。時にダート、時に水をつかんで潜ろうとし、時に力つきてフッと流れに乗る。そんなアクションを続けていた。
やがてサイズは判らないが水柱が上がる。手元にはなんの感触も伝わってこなかったが、今日はなんにも思わなかった。ハンマー13で乗らないサイズは70センチ以下。三宅さんが自信を持って言っていたこの言葉を信じた。
そして流れが一気に強くなった19:30。ストラクチャーの真横でUターン、流れをまともに受けてルアーが勝手にダートしかかった瞬間だった。フッと抜きを入れた瞬間に水面がへこんだ。来たか?
最初は70センチ程度かと思った。そのまま寄せようとする方向にほとんど抵抗無く寄ってきたからだ。岸に向かって歩き出す。10mも歩いただろうか。突然ドラグがうなりだした。10m、20m、30m、40m。止まることなく猛スピードで出ていくラインに怖いとすら思ってしまった。やがて止まったところからファイト開始。
サイズが判らないだけに慎重にファイトした。ドラグの設定をもう一度確かめ、所々にあるストラクチャーの根ズレに気を付け、慎重に寄せる。5分もしただろうか、だいぶ近くに来た。魚は一度水面で反転を試みた。魚体は細い感じでやはり大きくはないかと最初は思った。しかし、やがて水面に出てきた尾ビレを見てこの魚が僕にとって自己記録となりそうなほどの大きさだと悟った。
数分後、岸際まで持っていってズリ上げてランディング。
ハンマー13を横にくわえてバイトしたようだった。
計測してみると96センチ。僕にとって自己新記録であり、東京湾奥で非常に価値のある魚に僕のArea3はここに最終章を迎えたのだった。
その後もあわよくばと頑張ってみたが、水柱が一発上がったのみ。
ディズニーランドの花火が上がったのと同時に終わりとした。
ほんとこの釣りは面白い。面白いから面白い人が集まっている。
そしてその出会いを作り出すクロスロードやT.S.S.T.。
秋シーズンは最高の形で終えることができそうだ。
みなさん本当にありがとう。
やはりシーズン最後にデカイのが出るという説は本当だったんだろうか。
使用タックル |
ロッド |
Palms SGP-86L
メガバス Destroyer F3-610XS |
リール |
シマノ ステラ4000 DH |
ライン |
東レ シーバスPE 1号 |
プラグ |
ミラクルワークス ハンマー13
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