Area8 - Stage2 〜 探し物を忘れに -熊本編- 〜
2002年6月27日 熊本出張 シーバス
忘れ物を探しに行く旅がある。
探し物を忘れに行く旅もある。
釣りの失敗というものは非常に人生における失敗と通じるものがある。
あちらを立てればこちらが立たず。
こちらを立てれば、そちらが立たず。
そちらを・・・。
と、非常にハイレベルな釣りを維持する上で注意しなければならないことは数多く、しかも相反しやすいのでキリがないのだ。
ほとんどのことを体が覚え、そしてなお細心の注意を持って挑まなければハイレベルな釣りを維持することは難しい。
ここから色々な話の中で、この世界の実力者の話を少し書いてみる。
意識して欲しい点は、まず始めに各個人のスタイルがあって、それを支えるスタイルもあるということだ。
誰が正解で間違ってるとかそういうことではない。自分のスタイルに合わせて各人が考え出した様々な支えるスタイル。
みんなも意識して取り入れてみるといいだろう。
例えば、バーブレスとバーブ付きの話。
バーブ付きでフックを伸ばされてバラすケース。
これってのはほとんどのケースに置いてアワセが弱い事が多い。
返しの手前、先端しか刺さっていない状態で、ファイトするからそうなるのだ。
だから、ビシッとアワせて返しまで突き刺してしまえば、まあ後は多少いい加減でも大丈夫。
問題はアワセを入れる瞬間。バイトの瞬間にしっかりとためて、向こうの動きでフックセットに持ち込んでからアワせた方がいい。
PEラインでバーブ付であることが多い人は村越正海氏のファイトを参考にするとイメージがわくんじゃないかな。
ヒットすると彼は何度も強い追いアワセを叩き込む。しっかりとフックの根本まで掛ける。そして後は慎重にファイトする。ロッドは比較的スローなおとなしめのロッドが向いている。
ナイロンラインでバーブ付きであることが多い人はウエダの西村氏のファイトが参考になるはずだ。
ナイロンだとアワセでしっかりと根本まで差すのは意外と難しい。だからテンションの変動の吸収性がいいスローテーパーでなおかつパワーのあるロッドでファイトする。ファイト中、シーバスが動くたびにフックは根本まで少しずつ刺さっていく。
よくウエダの西村氏が強調して言うのは、フックの先端をギンギンに研ぐ必要があるということ。ここがこのスタイルの生命線なのだ。
ナイロンでバーブレスが多い人はそうね。榎本氏のファイトとかが参考になるはず。後はリアルの森田さんとか。
アワセもそんなにいらないし、特別なファイトも不要だ。根ズレを交わしながらテンションを維持し続ければほとんどのケースにおいてしっかりと根本までフックセットするはずだ。この場合のロッドも理想的なのはパワーがそれなりあって吸収性に優れたロッド。しかし、吸収性に優れたロッドはほとんどの場合アキュラシーが弱い。多少はナイロンの吸収性に頼って少し堅めのロッドで勝負するのもいいと思う。
今年の僕はPE主体ながらもこの辺を押さえられるラインということでレイジングウォーターナイロンを作ってみた。
最後に僕が好むPEラインにバーブレスの人。スタイルにも書いてあるけどはっきり言って厳しい釣りになる。しかし、感度も最高なので楽しさも最高だ。
アワセはバーブレスなので、はっきり言って不要といえば不要。どちらかと言えばスイープに軽く竿を立てる程度でも十分だ。
首振り数回を竿を曲げた状態でしのげば、まず間違いなく根本までフックセットする。そこからはテンションを維持しながら魚の突っ込みをかわせばいい。理想的なロッドは吸収性に優れたローパワーなロッド。
しかし、ヘビカバみたいなストラクチャー近距離接近戦だとそんなロッドでやってる余裕はない。
アキュラシーも弱いし、主導権を取れなければ根ズレという結果が待っているからだ。
そんなことを5年ほど前にあーだこーだと色々と考えた末に出した結論は攻撃的路線だった。
まずは掛けることを優先する。
アキュラシー、飛距離、アクション。その3つを満たすロッドに、高次元の釣りを展開できるPEライン。
川の流れの中のハロクラインなんてナイロンラインではわからない。
水平に存在する水のヨレの魚に対する引力。瀬の強さを知っている人なら理解できるだろう。
そこを察知しながらの釣り。
これがヘビカバスタイルだ。
そんなタックルで食わせまくり、掛けまくる釣りを選んだのだ。
掛け最優先。掛かった後のことは掛かってから。
だからこそ、ヒットしたら関節を使って柔軟にいなしてやらなければならない。
ロッドを立てたまま笑ってられる釣りではない。足首から手首まで全ての関節を使って魚のパワーを分散させる。
分散させないとどうなるか、最終的にフックが刺さっている魚の身に負担が集中する。一番弱い部分だ。
ここが切れてバラシとなる。
簡単に書いたけど、理解できただろうか。
他にも色々なタックルがあるし、考え方もあるが、最終的にどのタックルを選ぶかなんて好みの世界だということを。
全てが合理的でなおかつ魚が獲れるタックルなのだ。
しかし、どのタックルにも生命線がある。
それを忘れると痛い目に遭うという話をここからしよう。
6月27日。
博多から熊本に入り大きな仕事を片づける。
熊本は夜が遅い。20時になってようやく暗くなった頃にホテルにチェックインすると、荷物が届いていた。
差出人は僕。箱の中には風神号と簡単なタックル一式。
それを持ってタクシーで駅前に、ナビ付きのレンタカーを借りて準備完了。
目指すは熊本のランカーだ。
地図を見ながらどこでやろうかと思案する。
この瞬間が最高の幸せだ。
緑川、白川。全国的に名の轟くスズキの一級河川がある。
その横に坪井川という川も。あまり聞かないけどここが一番市内から近い。
まずはこの川に行ってみることにした。
まずは市内から数q走って川沿いの道に出た。
車を路肩に止めて川面を覗き込む。
川幅は15mほど。所々干上がってる。
更に数分走る。
また覗き込むと同じような感じ。
潮は上げ潮のようだ。
初めてのポイントを攻める場合、地形が結果に大きな影響を及ぼすリバーシーバスにおいては昼間の視察が大きな要因をしめる。
ストラクチャーみたいに目に見えるのは橋脚ぐらいなもんだ。
港湾部も少しはありそうな感じだけど、熊本に来て港湾部ってのは僕の中ではあまり頂けなかった。
やはり川スズキを狙ってみたい。
そんな不利を知っての夜からの川。
そんな場合は最後は足が決める。そう言い聞かせて小移動、小散策を繰り返す。
熊本は月曜日に雨が降ったらしい。
今日は木曜日、3日経ったけど川はかなり濁っている。となると、夜の狙い目は下げ潮だろう。
ん?下げ潮って何時から?
天気予報で確認する。
それまでに挑むべきポイントを決めなければ・・・。
市内のあたりから20ヶ所ぐらい覗き込んだだろうか。河口部まで全部見て回って、僕が決めたのはこの場所だった。
河口から何qかあがったところ。
川幅は40mほどある。
橋のたもとにある常夜灯がベイトを寄せていた。
この上流側に、竹杭が1本、近くに瀬もあった。
最後はの勝負は流れ沸き上がる瀬になるだろう。
上げ潮がトロトロと川を遡っていく。風は全くの無風。
しばし、常夜灯の周りでイナッ子のジャンプなどもある中、ビリケンやアイマなどで探ってみるが、反応はない。
やはり下げか。
いったん、真っ暗な河口部近くに行って色々と試してみる。
水面を見る限り、河口部も結構浅く、なんだか瀬があるみたいだけど、流れが弱いし、暗いしでイマイチはっきりとは見えない。
下げ潮になればはっきりと見えるのだろうけど・・・、その時に時合がすぎていれば終わりだ。
やがて潮が止まった。
コンビニを探して夜食を食う。
1時間ほど車の中で仮眠する。しかし、ヴィッツじゃろくに寝れん。
1時半、先ほどの場所に到着。
あたりは更にひっそりと静まりかえり、車の通りもほとんどなくなった。
川の流れは思った以上の流速で下げている。
橋下にそっと降りると、常夜灯の下でセイゴがライズしている。
しかし、セイゴと判っていれば狙うことはしない。
大きいサイズが潜んでいそうな暗がりに、ビリケン10.5を通してみるが反応無し。
フレッシュバック100SRもキャストしてみたが、セイゴがつついたのみ。
橋脚にもついている様子はない。
やはり瀬か。
途中の竹杭でできた大きなヨレをアイマとシープで丹念に流す。
30分近く掛けてやってみたが、バイトはない。
まあ、東京みたいにそうそう出るモンじゃない。
隣の芝はなんとか、の通り、熊本にさえ来ればランカー級がぽんぽん釣れるイメージを持ってしまう。
実際は違うことは判っていても、だ。
で、瀬に向かう。
ここで出なかったら、後は今後のために河口部の瀬の位置を確認しに行こう。
そんな風に思いながらキャスト開始。
シープ115で鏡のような水面に絶妙なヨレを出しながら水が下から押しあがる瀬に入れていく。
6か7投目だった。
シープが流れをつかんだ瞬間、シープのうねるようなアクションがロッドティップに伝わった途端に、
ガッポーン!
という音とともにシープが水中に引きずり込まれる。
き、来た!!でかいぞ!
耳の裏にかすかな鳥肌を覚えながら、膝を一瞬で落としてティップをやや前方に送り込む。
そして待ちに待った、いや、それはこちらが想像していたよりも、あまりにも重量感のある豪快なテンションが手元に伝わってきた。
ここでロッドをスイープに立てる。
風神号がバッドからきしみを立てて曲がる。
グバフッ!!!
水面で1回、もんどり打った。
80センチぐらいありそうだ。
そこから魚は流れに対して横切るように首を振りながら泳いだ。
次に乗って下流に向かって一気に走り出す。
すごいトルクとスピード。
ロッドを横に倒し、グーッとためる。ステラが気持ちいいぐらいのドラグ音を出して糸を放出する。
魚のテンションでフックが刺さることを期待する。
次に止まった時にもう一発追いアワセ。
これが僕が体で覚えたランディングの技術だった。
その瞬間だった。
考えられないフックアウト。
ええ!?
うそ!!??
思わずしゃがみ込む。
とっさに今のバレた瞬間の出来事、右手に残った記憶に僕は愕然とした。
信じられない、いや、滅多にあるケースではない形でバラしてしまった。
走っている最中の、しかも、さほど身切れするほどの無いテンションでのフックアウト。
ルアーを回収する。
テールフックが2本、90度以上大きく伸ばされていた。
フックが伸ばされたのか・・・。
その次の瞬間、僕は凍り付いた。
フックに光る大きな返しを見つけた。
僕は返しをつぶし忘れていたのだった。
先端までしかフックセットできない状態で、走られたらフックは伸ばされるだろう。
完全なる自分自身のミス。
スズキはそんなにバレる魚ではない。
バレるのは下手な証拠。
しかし、その生命線を忘れたら、タックルバランスを崩したタックルなら、
スズキは非常にバレやすい魚になってしまう。
こんな事は12年間で何度となく経験したことだった。
でも、最後に経験したのはもう覚えていないぐらいの昔。
それがここに出た。
悔やんでも悔やみきれない失敗であった。
そして坪井川はもうチャンスをくれることはなかったのだ。
絶対、再挑戦。
使用タックル |
ロッド |
アピア 風神ゼータ プロト |
リール |
シマノ ステラ4000 DH |
ライン |
東レ シーバスPE 1号 |
プラグ |
BANZAI シープ115 |
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