村岡昌憲の釣行記。東京湾のシーバスからその他節操無く色々と。

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Area8 - Stage3 〜 導かれるままに 〜

2003年2月15〜17日 長崎市内 シーバス

 

 

 

風神ZNEON KHIGHT83Lがようやく長崎へ届いた。

港湾部のシーバスを究極に楽しむロッドとしてアピアと共同開発した一品だ。

昨年の夏からずっとテストを繰り返してきた。

ここに来て、装飾も終えた最終仕様品が完成。今回はデザインの問題だけなので、魚を掛ける必要はすでに無いのだが、やはり1本釣ってからGOサインといきたいものだ。

 

フッコクラスのバイトも徹底的に拾うことを意識した自動鬼掛けティップ搭載。

特にクルクルや湾ベイトなどのフック1本もののフックセット性能が凄くなってる。こういったブレード系特有のバレやすさはティップが柔らかい分、少しは減っているようだけど、最後は腕だ。ガシガシ掛けてばらさないファイトを覚えてくれ。

ミノーに関しては文句なしだと思う。ほとんど乗る。バラシに関してはやっぱり腕によるところが大きい。

また、港湾部用として、ストラクチャーギリギリにルアーを落とすピンポイントシュート性能を徹底的に追及した為、軽さとブランクねじれを起こさない適度な張りにしあげた。

とにかく掛けて掛けまくるロッドを目指したのだ。

ちなみに風神号譲りの飛距離性能はもちろんキープした。飛距離に余裕があればキャスティング精度も高くなるし、何しろ人より遠くに飛ばせることはアドバンテージになる。

飛距離はX-80SWやビーフリーズなどの8〜9センチミノー、アイマコモモなどのシャローランナーなどに見られるルアー5〜15gにセッティングの中心を持ってきた。12〜18gをフルキャストした時の飛距離は絶句もんだと思う。

だけど、昨年のAreaでリバーを戦い抜き、90pを含む何本かの80UPをあげたように阿修羅12pやビリケン11pまで(28gくらい)なら難なくキャストできるブランクパワー、ファイティングパワーを持ってる。

同じようにバッドパワーはヘビカバスタイルを継承させてもらった。港湾部で70UPと余裕でファイトできるロッドが欲しかった。フッコクラスはあっという間に寄ってきてしまう。ファイトを楽しむという感じにはならないが、とっととリリースして大型を狙って欲しい。

港湾部専用究極セッティングだが、リバースタイルでも十分に通じる実力を持ってる。そんなロッド。

興味ある人、釣具店でぜひ手に取ってみてください。

ちなみに次は陸っぱり&ボートのヘビーウェイトプラグのキャスティングスタイルを追求した72と68を開発中。

 

さて宣伝はここまで。

今回は長崎。大きな仕事で来たはずだったけど、予想もしない事態に巻き込まれた。

いや自分から事態に飛び込んだという方が正しいだろう。

おそらく死ぬ時に走馬燈があるのだとしたら、きっとその一コマになるに違いない。

まあ詳しくは、そのうち気が向けば書くこともあるだろう。

いずれにせよ、もはや仕事どころではないし、釣りどころでもない。それがホントの所。

しかし、釣り具を持ってきてしまった。

もはや運命に導かれたとしか思えない長崎で、シーバスに挑む。

東京湾奥スタイルでまずは挑んでいることにした。

 

 

長崎でシーバスというと、とにかく釣れるというイメージがあった。

で、実際色々と話を聞いてみると、五島や平戸といった県北部でヒラスズキがたくさん釣れるということ。確かに多くの人が遠征に出かけている。ヒラスズキのテレビ撮影なんてほとんどここばっかりじゃないのって感じになっちまってる。

で、僕がいるのはそこからかなり遠い長崎市内。東京から見たら、こっちだってさぞ釣れるのだろうと思っていたけど、長崎市内でのシーバスの情報はほとんど得られないのだ。インターネットでの情報も乏しい。

しかし、長崎市内近郊にこだわる。Area8はあくまで出張中に挑むスタイルだ。遠征ではない。

 

金曜日の午後、ポイント探索に出かけた。

ざっと市内を車で周りながらあちこちを見て回る。

とにかく透明度が高い。濁りがあるのは一番奥の港湾部だけ。

透明度が高いとシーバスは本当に難しくなる。

セオリーは風表の磯場のサラシ狙いだろう。

他には流れの中か、常夜灯などの明暗を使うか、ベイトにボイルする場所を見つけるか。

今回は装備が貧弱だ。ウェーダーなんて無く、ただのブーツだけ。

これで一人で磯場の風表のサラシは怖い。僕はそれほど磯の上の夜釣りには慣れてないし、遠い西の国で一人寂しく溺れ死にたくない。それに東京湾奥のスタイルではない。

と、いうことで風表のサラシは今回は禁じ手とした。

 

しかし、実はヒラスズキを釣ってみたいと思ってた。

となると、磯場に隣接する港周り、風でできる流れとベイトを絡めた作戦で、磯のスズキが回遊してくる場所を絞り込むことにした。東京湾奥というより房総スタイルだけどさ。

で、見つけた場所。地名は神の島?

西が開けた大きな磯場のワンドの中に、堤防1本でさらに小さなワンドを作り出している形。

しかも常夜灯が1本しかない。見渡す限りの海岸でたった一つの常夜灯。

真っ暗な中のたった一つの常夜灯が持つすごさは、幾万の光が照らす東京湾奥では実感として感じることがない。しかし、房総や三浦遠征などの際にそのすごさは何度も経験している。

絶好。一番得意な形。


長崎はホントに綺麗な海を持っています。

写真で見れば左側が西。西から風が吹いた時、テトラから磯場に向かってキャストする。

写真には写っていないけど、荒れればベイトが港内に固まる。

ベイトを探す。

こう、透明だとなかなかいないもんだけど・・・

 


いまくるのです。

 

9pぐらいのシコイワシ。最高クラスのベイトじゃないか。

それが百万匹ぐらいいる。他にも7pぐらいのヒイラギもいっぱいいるし。

 

 

僕はすでにもらった気になった。

 

 

そして翌日、その巻き込まれている事態を一通り終わらせて、ホテルに戻ると、円い筒がフロントに。

速攻でもらって封を開けると、風神ゼータ83ネオンナイト、すでに装飾も終わってすげぇかっこいい!

車で出かける。今日は大潮。釣具屋で買った潮位表を見ると、19時頃潮位288cm。288?

すごい数字だな。そこから -30pまで引くのである。

やはり狙うは潮位の高い時間だ。

釣り場に着くと、小雨が降っていて風が弱い。

常夜灯は絶妙な明るさで、周囲を照らしている。雲が低く夜空が明るい。

晴れた月のない夜だったら、辺り一帯で唯一の光源となるこの常夜灯に多くの魚が集まるだろう。

 

堤防の先端に入り、X-80SWをキャストしてみる。特に常夜灯の光のエッジ付近を執拗に通す。

15分ほど四方八方にキャストしたが、反応がないので常夜灯の下を覗いてみる。

ベイトはぎっしり。けれどのんびりしている。

回遊を待つか。

いつのまにか完全に無風になっていて、海面は油を引いたみたいになってしまっている。

移動も考えたけど、やはりこれだけのベイトがいるのである。動くのは得策ではないと考えた。

とりあえずは潮が大きく動く最中にボイルが始まるのではないかということで、のんびりとテトラの上で考え事をしていた。

 

 

この1週間はひたすらに人のために動いた日々だった。

自分は多くを失った。しかし、何人もの不幸を少しはマシな形にできたと思う。

これで良かったんだ。そう心から思える日がきっといつか来ることを信じよう。

 

 

 

1時間は待ってただろうか。

小雨が降り続いて僕はかなり濡れてしまった。

寒くはないのだけど、上がメガジャンなので雨が染みてくる。

一通りキャストをする。やっぱり魚がいない。一度移動することにした。

 

次はそこから40kmほど走った磯場に入った。地図で見るとインゲリって書いてあった。

波がないので、とりあえず長崎の磯場というセオリーとはどんなもんかと見ておきたかったのだ。

海岸線を走る道に車を止めて、巨大なテトラ群を降りる。テトラの下に磯場があった。

荒れてる時に入れるのか?

一人じゃ自信ないな、やっぱり。

ずいぶんと潮が引いている。

ふと海岸を歩きながら、ロッドを出せそうな場所を探す。

ふと砂の様子が変わったのであたりを見渡すと、そこはすっかり干上がった河口だった。

 

なかなか手強いぞ、長崎。

 

 

とりあえずゴロタ場みたいなところでキャストしてみたが、かなり遠浅だ。

やはり昼間に地形を見ないことにはどうしようもない。

また40km走って、さっきの港に戻った。

車のライトをかなり前から消して車を止め、そこから海面に影を落とさないようにテトラの先端まで行く。

潮は相当引いて、港の中はほとんど水が無くなっているといっていい状態。

房総ならこのタイミングでボイルが起きることが多いのだが・・・。

しばらく待っていたが、シーバスが近づいてきている様子はなかった。

やはり沖から少しは風が吹かないとダメかもしれない。

これだけベイトがいても、フッコ1匹入ってこないとは・・。

 

帰りに堤防の上のゴミを拾った。

乾電池3本と、空き缶2ヶ。

 

 

 

 

 

日時  2月16日
ターゲット シーバス
ポイント 長崎市内

 

昨日の敗因を色々と考えた。

とりあえずはポイントを知らないことが一番なんだけど、教えてもらうと自分の魚でないような気がして、わざと耳を閉じているぐらいだからそれはそれでいいのだ。

外洋に面しているせいで潮の透明度が高い長崎では、風が吹かないとやはり厳しいかもしれない。

そして今日の予報もあまり風が強くない。しかも晴れ。今晩は満月だ。

昨日のパターンや磯場はおそらく厳しいだろう。

ならば濁りが常にある川しかない。

 

地図を広げて川を探す。

あの〜川が少ないよ長崎。

 

 

市内の真ん中を流れる浦上川。あとは繁華街を流れる中島川。

うーん。

どっちも昼間に見に行ってみたが、東京の川より汚い川なのだ。

あまり気分が乗らない。

 

少し遠くの川を探してみる。

香焼方面に行く途中に川を発見。

見た瞬間、僕は小躍りした。

 

 


瀬があるっす。

 

 


俺がスズキならここにつくよ。と言わんばかりのいい瀬だった。

 

間違いなく魚が付く瀬だ。

しかし、川にどれだけふところがあるか。水がかなり綺麗なのだ。

上流の方を見ると山がかなり近い。ダムもあるだろう。

ということは川の流量も少ないかもしれない。きっとベイトのストック量はたいして多くない。

となれば、昨日の雨がどれだけ流れに貢献するか、だがこれもダムから近いとさほどの好条件にはならないかもしれない。

 

 

しかし、ここが僕にとっては一番だ。きっと他にもっといいポイントがあるのだろう。

しかし、僕に許された時間で僕が探した中で僕の目が選んだポイントの中ではここが一番だったのだ。

昨日の場所よりはよっぽど魅力的だ。

今晩はここで勝負してみることに決めた。

 

 

夜、日が暮れた頃、ホテルを出る。

潮が下げてないので、とりあえず市内を流れる川の橋を回ってみる。

一番まともに釣れそうなのは稲佐橋とか書いてある橋だったが、車が近くに止めづらかったのでやめる。

ちなみに長崎は東京以上に、車を止める場所がない。結構、道が狭いのだ。

で、旭大橋。

ここも間違いなさそうな場所。最初はX-80SWで、続いてワンテン、リップレスベイトとあらゆるレンジを攻めてみたがバイトは出ない。橋脚でも明暗でも魚は出なかった。いい感じだったんだけどな。

 


確実性でいったら長崎市内で一番と思うほどいい感じでしたが・・・

 

そんで、昼間に見に行った川の中の瀬にいく。

ポイントに付くと川の流れがゆっくりと下げ潮に向かっていた。

昼間の写真でいう左側に入り、ドカポップを付けて、キャストする。

風神ゼータ83Lは一応、ドカポップ12cmでも楽々キャスト可能なブランクスのパワーがある。

しかし、ティップだけが細いのでキャストの仕方はロッドに乗せるようにしてキャストしないといけない。

村越正海氏のようなキャストね。キャストを使い分ければ驚くほど広い範囲のルアーをキャストできるのだ。

 

流れの中を瀬を越えるようにドカポップを流し続ける。

瀬はかなり長いので少しずつ動きながら広範囲の瀬を攻めた。

ドカポップで出ないので、阿修羅、ヨレヨレ、レア、ワンテンと段々とレンジを下げていく。

それでも出ない。

 

風がほとんどない。鏡のような水面、川の濁りもほとんど無い。

こうなるとすぐ横の道をひっきりなしに通る車の明かりが気になって仕方がない。

1時間ほどキャストし続けたが、しまいには瀬の頭が出てきてしまった。

ゲーム中、イナッ子一匹のジャンプすら見られなかった。

ポイント選択を間違えたのか。もっといいポイントがあるのか。

分からないけど、結果は結果だ。また明日頑張ろう。

 

この日は終わりにした。

帰り際にたばこの吸い殻を三つ拾った。

 

 

 

 

日時  2月17日
ターゲット シーバス
ポイント 長崎市内

 

夜明け前から仕事に入り、昼過ぎには寝た。

夕方起き出して、市内の不動産屋を回る。

とは言っても、別に僕が住む訳ではない。

 

長崎は僕の人生の中でも過去に無い規模の仕事を請け負った事で訪れることになったはずだった。

しかし、蓋を開けてみると、ただ人の幸せを純粋に願う日々があった。

平穏で静かな暮らし、それが普通の幸せであって欲しいと僕は願い続けた。

しかし、言葉は優しい幻にしかならない。現実は残酷なまでに厳しい。

不況の理不尽なまでの波と、行政の失政に耐えきれず、一つの家族が不幸に陥ろうとしていた。

同情するだけで話はすむ事だった。しかし、僕は一緒に闘う事を選んだ。

僕は試されていると直感で思ったのだ。

この家族を救うことが、最終的に僕を、憎悪に生きた昨年の僕を救うことになると。

 

 

 

釣りの話に戻ろう。

不動産屋を回った後、昨日の敗因を色々と考えていた。

昨日の川筋の瀬、あの状況で出ないということにどうしても納得がいかなかった。

出せないということは魚がいないということか。

そんなはずはないだろう。それを言ったらプロは終わりだ。

 

気になったことは、瀬の上を流れる流れの向き。

逆だった。

水は本来は浅い方から深い方に向かって流れるはずなのだ。

しかし、昨日の状況は違った。

川の地形によるものだろうと思うが、瀬の上を深い方から浅い方へ向かって潮が流れていた。

基本的に僕は瀬の落ち込みにいる魚を狙うのが得意だが、昨日の状況はそうではなかった。

おそらく、魚は瀬の深い側、すなわち上流側に位置していたのではないか。

だとしたら僕は攻め方を間違えた。

そんなことを考えた。

 

 

 

昨日撮った写真をもう一度。

奥が川の上流、写真右下に向かって川は流れていく。

写真右下に向かって水中に続く瀬が見えると思うのだけど。

昨日は、左側の岸からキャストをした。

上流の方から手前まで、歩きながら長い瀬の上を片っ端から攻めたのだ。

しかし、バイトも出なかった。

おそらく魚は瀬は絡むが、瀬の上に固執していないと考えた。

となれば、瀬が川のブレイクラインとなる時に攻めないと魚に食わせることは難しい。

要するに瀬の頭が出てきてからということになる。まさにこの写真の状態だ。

この時に、写真の右から瀬の際にキャストしたらどうだったか。魚は付いているはずだ。

ただ、水は透明で無風の満月、車のヘッドライトが川面を走る状況で本当に魚は付くのだろうか。

 

 

予報は今夜も晴れ、やはり満月が海面を照らす。そしてこの川の水の透明度。

しかし、信じた。

 

 

魚は絶対に入ってる。

これだけの川にスズキがいないということは考えられない。

 

 

で、あれば、どこで食わせるか。

おそらくチェイスさせる展開、ルアーを見させると絶対に食わない。

瀬がブレイクラインと絡む時に、シーバスが付く位置に、一発で放り込んで追わせずに食わせないといけない。

となれば、写真右側からキャストしないといけないと考えた。

 

 

客先の現場に行ってロープをもらってきた。

ポイントに付いたのは21時頃。いよいよ満潮だ。


夜はこんな感じ。デジカメでこれだけ映るんだから相当明るいです。

昼間とほぼ同じ位置で撮ってます。写真の左側は真っ暗に近い感じ。

 

相変わらず風が無い。水面は鏡のようになっている。

この状況だと光が水中に入り込みやすい。魚の警戒心もかなり増すのだ。

ファミレスやスーパー、パチンコ屋などの灯りが無ければかなりいいのだが。

 

すでにゆっくりと川の流れが下げ始めている。

手前の岸際が浅くなるのを待ってロープで降りる。

しばらくは護岸の壁に身を潜めて、水面を眺めていた。

相変わらずイナッ子一つ飛ばない。

 

自分が選んだ選択は合っているのだろうか。

13年間のがここで粘れと言っている。

その声を、感性を、経験を信じるのみ。

 

自分を自分が信じなきゃ誰が信じてくれるのか。

答えは、自然のみが知っている。

空を見上げると、輝くばかりの満月が僕を照らしている。

 

 

 

 

キャスト開始。

 

風神Zはとても気持ちよさそうなキャスト音をあたりに響かせながら、無風の空気を切り裂いて、レアをかなり遠くへかっ飛ばす。

やっているうちに、どんどんと潮が激しさを増してくる。

満潮からすでに1時間、ここから3時間の勝負だろう。

 

 

ちなみに長崎の潮位は潮時表を見てもなんだかよく分からない。

たった一つ、山を越えるだけで潮位440pとかもうむちゃくちゃな世界が待っている。隣の湾では潮位差が30cmしかないとか。

地域差がかなり激しいのだ。っていうかむちゃくちゃだ。ありえん。

 

 

 

 

HPでリンクしているインターネットの潮時表にも長崎市内の潮時表はない。

地元の人は慣れれば感覚で分かるのだろうけど、初めて来てこれでは難しい。

2日間の状況を考えると、長崎はとにかく潮の動きが大きく、下げ潮は一瞬でグワッと動く印象が強かった。

その辺の動き出すまでの加速感は東京以上だ。6時間のうち2時間だけ一気に潮が動く。そこが時合となるのだろうか。

今日は21時頃が満潮で、3時頃が干潮だと漠然と考えるしかなかった。

 

 

対岸の瀬に向かってフルキャストをする。

レアやワンテンで探ってみるが、反応はない。

この川は水深もあまり無いようだ。ワンテンだと底をすってきてしまう。

 

ドカポップにチェンジ。

とにかくルアーを見られたくない。

だけどパターンはおそらくデッドスローだ。

ジャーキングで誘って食わせるのは大きな流れの中でこそ有効なテクであり、この様な小さな川ではデッドスローの方が強いと思う。

 

 

そして、だったらトップの方がいいのである。

どんなに水が澄んでいても、夜が明るくても、そうであればあるほどトップにするべきなのだ。

それが僕の13年間の試行錯誤が導き出した答えだ。

 

 

 

空は薄曇りだけど、満月が辺り一帯をかなり明るくしていた。

僕は商業施設の煌々と照る灯りを背負った。

ルアーの下流にチェイスしているシーバスを想像し、U字を描く瞬間、魚にとってルアーが逆光になる様に流す角度を調整していく。時合までに形は作っておきたい。

 

 

こんな事を30分ほどやっていただろうか。すでに22時を周り、潮もますます加速感を出してきた。

付近の看板の灯りが少しずつ消えていく。車の通行量も静かになってきた。スーパーの灯りをさっさと消さないか、恨めしく思ったが、看板を見たら夜12時まで営業。あきらめる。

 

いい感じ度が増してきている。明らかに昨日よりいい感じ。

僕のスタイルにより近いということだ。

 

 

対岸から瀬を打つ感じ。昨日は思いつかなかった。昨日は光を避けた。灯りを背負うのを避け、暗い側からキャストをした。

しかし、今日は道の照明や看板の灯りなど、全てを背負う側に立った。

水面にどうしたって自分の影が映る。これは神経を必要以上に使う。

しかし、川の地形上こっちの方が攻めやすい。ルアーを見られるなら逆光を使って見せない。

気になるのはトラックの灯りが一瞬、水面を走ることだけ。濁っていればどうということはない。

しかし、これだけの透明度の中でスズキという魚がどれだけ気にするか。

その経験は僕にはないのだ。

 

 

 

ドカポップをデッドスローで流す間、鼻歌を歌っていた。

なんの歌だかは内緒。僕にとって縁起がいい歌だ。

 

 

 

グボッシャ!

 

突然、水面を泳ぐドカポップに水柱が立った。

 

 

 

 

うわっ!!

乗らなかった。

 

 

 

 

いた!

 

なんだよ。いるじゃんよ。

 

 

 

 

僕は飛び上がって喜んだ。

とにかく僕のアプローチに対して、長崎のシーバスから初めて答えが返ってきたのである。

2日前からの釣りを通して初めてのバイト。

僕の考え方に応えてくれスズキが目の前にいたのである。

魚が出たという事実が、僕の中の不安を全て取り除いた。

あとは釣るだけだ。

時計を見る。22時19分。

 

 

 

 

ドカポップを流し続ける。しかし、その後は川は沈黙し続ける。

流れがさらに速くなる。対岸の瀬の頭が出てきた。

そう、昨日はここで帰ってしまったのだ。対岸でやっていたから瀬が出てきたところで、釣りがもうできなくなったのだ。

足下の水が見る見るうちになくなっていく。

 

しばらくは護岸の壁の影の中に立っていられたが、いよいよ潮が引くにつれ、照明の中で釣りをせざるを得なくなった。

少し前へ出る。僕の影が水面のブレイクラインを超えて落ちている。

これで追わせると辛い。

頭上には満月の灯り、背後にはいくつもの灯り。

光の方向性を忘れずに、流れの中でラインをメンディングしながらコースを変え続けた。

しかし、ドカポップには出ない。

少し弱気になって、アイマコモモにチェンジ。

同じように流すが出ない。

流れが速い。

アイマも流れをつかんで潜ってしまうような流れだ。潜ったら絶対に出ない。そう思った。

 

ふと上流の方の瀬が気になった。

暗闇に目をこらすと曲がった瀬の中で激しく流れが当たり、ヨレ返しているゾーンがあった。

ちょうど川の流れが集中している場所。

気になる。魚がいそうだ。東京なら絶対に出るはず。

一度水際から離れて、護岸の壁に沿って、影を水面に落とさないように移動。

そのゾーンに対して攻めやすい位置へと移動する。

かなり遠い。水際まで出るとプレッシャーを与えそうだった。

アイマでは届きそうもない。

 

 

タックルケースの中を探す。

一番飛ぶといえば、レアだ。

しかし、レアはこの流れの中ではきっと暴れてしまうだろう。

であれば、リップレスにするか悩んだけど、流れがのたうち回っているゾーンは数m程度しかない。

リップレスで大きなU字を描いていたらおそらく魚にルアーを見られる展開になる。

であれば食わないだろう。

 

ならば、もう一度護岸に沿って、そのゾーンのやや下流側に動いた。

レアに川の流れをまともにつかませたくない。

ここからのキャストだと更に遠いが、流れの中を斜め下流に向かってレアが泳ぐことになる。

であれば、レアが水を掴みすぎることもないだろう。

 

 

距離は40mぐらい、狙いを定める。

息を落ち着かせてから、フルキャスト。

 

 

風神ゼータのピンポイントキャスト性能は、流れでわきかえるゾーンのほんの数m上流にぼしゃっとレアを落とした。

サミングも完璧でいきなりラインが張っていると言っていい状態。

 

 

あまりにも絶好の着水位置に、一瞬、鳥肌が立った。

だから、何もしない。

することがなかった。

 

強いて言えば、無風の空気の中をふんわりとたるむシーバスPEのラインスラッグを取ったぐらいだろう。

 

 

 

激しい流れの中にレアが入る。

気持ち、ロッドを立ててラインを張る。ティップにレアが水をつかむ感触が伝わる。

その瞬間、水の下で何かが動いた気がした。

んんん?

ティップに衝撃が走る。

 

食った気がする。

グググッと根掛かりにも似た感じでラインが引かれだす。

ティップが食い込むのを確認するかのように、両手でロッドを前方に送ってから背筋と腕力で大きなストロークでアワセを叩きこむ。

 

 

 

水面が豪快に割れた。

ゴッバァッ!!

 

食ったぁ〜。

しかもでかい!!!

 

 

 

 

なぜか僕は満面の笑みで、上の歩道を見渡した。

(よほど嬉しかったに違いない)

 

 

魚は流れの中央に出て来るなり、一気に下流に走る。

風神ゼータで溜める。魚は大きい、3分はかかるだろう。

エラ洗いの一瞬、ブルーブルーカラーのレアが口の外に掛かっているのが見えた。

光を背負ってる恩恵が初めてあった。

 

多少、ドラグを緩める。

しかし、川の中に何が沈んでいるのか分からない。あまり走られたくない。

ラインの消耗を避ける意味でロッドを立てっぱなしにする。

 

魚のエラ洗いは力強いが、リズムは遅い。さぞ重たいスズキに違いない。

何度か、下流に突っ走ったが、魚も疲れてきたようなので寄せに入る。

少し川の中に入り、ロッドを寝かせて上流側から少しずつ寄せてくる。僕も寄る。

透明な川の水の中で、魚が見えた。

むっちゃくちゃでかい!!

 

 

 

 

やべぇやべぇ、とぶつぶつ言いながら、ますます慎重にファイトする。

ルアーのフックに掛かる力がねじれないように、極力同じ方向から寄せ続ける。

魚が上流を向けば、ロッドを右に倒し、左を向けば下流に倒す。

シャローに魚が入ってきた。

こんなでかいの、ずりあげられっこないぞ。

思い切って尾びれの付け根をつかむ。ロッドを大きくあげて魚の口を水面に出す。

魚が暴れるのをこらえた。10秒ほど必死の攻防。やがて向こうが大人しくなったところを口を掴む。

 

 

ランディング成功!

 

 

 

 

うおっしゃー!


長崎初シーバスばい。

 

 

 

とりあえず、まずは猿みたいに飛び上がって踊る(笑)

 

魚の口からルアーを外し、地面に置く。

サイズを測ろう。

口先に目盛りを合わせて、尻尾の先端に目をやる。

どうだ?

 

 

 

 

こ、超えた・・・!

 

 

 

 

103センチ!

 

 

 

もう一度、猿みたいに踊る。

 

 

 

魚に戻って、もう一度冷静に計り直す。

うん、1メートル3センチ!

 

 

風神ゼータも魚も放り出して、とりあえずVゴールを決めた選手みたいに走りだした。

体中から喜びが爆発した。

走らずにいられなかった。辺り一帯を何度も飛び上がった。

ゼーゼーハーハーとなってから、写真を撮ることにした。

 

 

結構時間が経ってしまったかもしれない。

急いで手持ちで何枚か撮り、レアを口元に置いて写真を撮る。

レアは12センチもあるのに、この存在感のなさ。フック2番なんだけど・・・。

 

アロウズレアBLUEBLUEカラーやってくれました。

 

 

魚を持って水際へ走る。

蘇生を試みる。っていうかずいぶんと目が力強い。

10秒でもう力強く暴れ出した。手を離してみる。

ぐいぐいっと一気に加速して流れの中へ消えていった。すげぇやつだ。

 

 

 

 

初めてのメーターオーバー。

ここ遠い長崎で、誰の案内も情報も得ずに、自分自身の目と経験だけでつかんだ魚。

 

 

 

俺の魚だ。

そう胸を張って言える大きなスズキだ。

 

 

逃がした後も、川の中で水を蹴りまくって飛びまくった。

このたとえようのない満足感。

最後に川に両手を合わして感謝の祈りを捧げた。

 

 

 

急いで車に戻る。携帯を取り出す。

誰に連絡しようか。

色々な仲間の顔が頭に浮かんだが、夜遅く野暮な話だよなと思ってやめにした。

 

アピア宇津木氏に連絡し、風神ゼータのテスト完了の旨を伝える。

ティップの柔らかさ、ピンポイント性能、そしてバッドまで絞り込まれた時のロッド全体のカーブバランス。

鬼掛けティップとピンポイントキャスト性能を追求すると、ロッドから粘りとパワーが消えていくというジレンマを抱えながらのテストだった。

しかし、これをギリギリかつ高次元で仕上げることができたと確信した。

メーターオーバーとのファイト中も、一度もパワー的に不安になることなく、非常にいいポテンシャルを発揮し続けた。

 

 

 

電話が終わり、時計を見たら23時15分。

川を見たらすっかりと流れの勢いが止まっている。

先ほど魚が出た位置は干上がり、ただの砂地となっていた。

恐ろしい程の時合の短さ、僕はゾッとした。

 

 

帰り際に空き缶と、コンビニの弁当が入ったビニール袋を拾って車に戻った。

 

 

 

 

ホテルに戻って一人で乾杯。

そして今、これを書いている。

長崎のシーバスはあまりにもあっさりと結果が最高の形で出てしまった。

しかし、長崎市内近郊はいいフィールドか?と聞かれたら僕はNOと答えなくてはいけない。

 

ざっと見て回る限り、魚が付くポイントが少ない。ポイントのキャパが少ない。

長崎市内は元々土地が少ない。干拓や埋め立てなどの工事は東京以上に進んでいる。

諫早湾を干拓したように、過去の工事でほとんどのシャローエリアは無くなってしまっている。

スズキがセイゴの段階で育つのにふさわしいフィールドを今回見つけることがあまりできなかった。

これは絶望的に恐ろしいことだ。稚魚が減れば親魚も減る。

 

 

釣り博でも多くの人に、長崎市内は厳しいと言われた。

しかし、長崎のスズキはたくましく生きていた。

人に追い立てられ、生息区域のほとんどを埋め立てられても、彼らはわずかな川筋や乏しい付き場で必死に生きている。

 

僕は誰がなんと言おうと、魚の王様はスズキだと思っている。

日本という国において沿岸部最大最強の魚なのだ。

その魚を、追いつめているのは他でもない僕たち人間だ。

 

 

ヘビカバスタイルのパターンは通じた。

たぶん長崎にいる間、あと何本かは釣れるだろう。

 

 

今日出会ったスズキは産卵前の魚体だった。その子孫の未来を願わずにいられない

ここ長崎に、稚魚たちの楽園があることを、その楽園を僕が見落とした可能性があることを、祈らずにいられなかった。

 

 

使用タックル
ロッド アピア 風神ゼータ83Lネオンナイト
リール シマノ ステラ4000AR
ライン 東レ シーバスPE 1号
プラグ ミラクルワークス ドカポップ12cm・阿修羅
邪道 ヨレヨレ〜
メガバス X-80SW・X-110SW
   

 




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