Area8 - Stage4 〜 ダート偏愛主義 〜
2003年2月18日 長崎市内 シーバス
このArea8の目的とは何なのか。
それは全国に出張するビジネスマンの(しかも、夜の繁華街に飽きた人の)新しい夜遊びスタイルを構築するのが目的なのだ。
ターゲットは北海道を覗けば、どこの海岸に行っても狙えるスズキ。
そして腐るものもない手軽なルアーフィッシング。
そのスタイルがArea8なのだ。
昨日のメーターオーバーキャッチ。
多くの人から電話やメールや掲示板などで祝福のメッセージを頂いた。
どうもありがとう。
生涯、きっと忘れられない思い出になるだろう。
ヒットルアーはアロウズレア、BlueBlueだった。
おもわず両手を合わせて拝みたくなるのは俺だけ・・・だろうな。
元々、僕はカラーにさほどこだわりがない。
銀系とパール系、中間色とクリア系の4種類あればいいという人だ。
だから、いくつかのメーカーから村岡カラーとかが出ているが、それは決して特別な場所や状況で使うものではない。
たいていは多くの場所で投入できる普遍的なカラーのはずである。
そしてこのカラーコンセプト、BlueBlueも同様、中間色系としてあらゆる状況で闘ってくれるカラーの一つを目指した。
ベイトの保護色である背中とお腹の色に、透き通るような透明感のあるブルーを採用した
そしてホイルの上に、ブルーパールを吹き、パール系でありながら銀系でもあるオールマイティカラーとした。
どんな状況でもファジー(死語)にアピールすることができる。昨日のようなリアクションでもいいし、追わせる時でもいい。
しかし、それだけではない。
このBlueBlueには、プロである僕が初めてコンセプトカラーとして願いを込めたものなのだ
そのコンセプトとは
青い海と青い空。
思い出して欲しかった。地球のあるべき姿を。フィールドのあるべき姿を。
きっと全ての釣り人が共感できる景色を願い、カラーコンセプトとして提案した。
アロウズとアトールはすぐさま、そのコンセプトに乗ってくれた。
メガバスには・・まだ言っていなかった。
メガバスからも出たらいいよね。ぜひやってほしいもんだ。
しかし、まさにゴミ問題に対して、このサイトを通じて僕なりの提案をし、その賛同の声でTIP-OFFが盛り上がる最中、この青い空と青い海を願うBlueBlueにメーターUPがヒットする。
それもまた何かに導かれてのものだったのだろうか。
そんなことを考えながら、海岸線を南へ向かって走っていた。
一夜明けて思ったこと、今度はダートアクションに反応する魚を釣ってみたい。
そんなゲームができる場所を探していた。また一からのポイント探し。
だけどこれが面白いのだから、やめられない。
ダートアクションが生きるのは、流れが速く複雑なエリアだ。
となれば手っ取り早いのは河口だが、長崎市内の川は流域が狭い。
河口であっても流れにボリューム感が全く無いのだ。
おまけに、堰が近いせいか、下げ潮後半になると、突然のように流れが止まる。
今晩は280センチから−32センチまで潮が引く。
潮差は312センチ。東京のアングラーならさぞ潮が動くだろうと思うだろうが、どうも勝手が違う。
潮位こそ下がるが、河口から堰までの長さが短いため、水が動く絶対量が少ないのだ。
満潮21時、干潮は3時。
時合は0時前と読んだ。
長崎から半島を1時間走ったところ。地名はごめん、またわからん。
そこを走っている最中だった。橋の上で、釣り人らしいよそ見運転をする。
え?
二度見で思わず振り返った。
ある橋の上で、一瞬、視野に飛び込んだ地形。
見つけた!
あわてて急停車し、橋の上に駆け戻る。
すごいでしょ。ってわかんないか。とにかくすげぇんだ。
橋の上で、水面を見つめる。流れの変化を読む。耳の後ろがぞくっとした。
水面は地形を如実に表す。浅いのか深いのか、ブレイクラインの位置、沈んだ障害物、魚を呼ぶ瀬。
ここはいける、そう直感できる場所だった。
あとはベイトがいる川かどうかだが。
街頭にピタリと身を寄せて、体が揺れないようにしつつも、水面に目を凝らしてベイトの気配を探す。
見た感じ、浅いし水は澄んでいるしで、ベイトの気配がない様な気がする。
しかし、すごい水のヨレ。この時間でこれほどなら、時合の瞬間はどれほどになるのだろう
気配!
ふと後ろに何かの気配。
パトカーの窓から顔を出したお巡りさんだった。
そのまま職務質問をされる。
警察官「あんた、何しよっとね。」
僕「いや、あの、ええとですね。」
以下、非常に長いので省略。
橋の上で街頭に抱きついていると不審に見えるらしい。(確かにごもっともだ)
5分後、ようやく解放されて(なぜか車のトランクまで調べられた)、タックルの準備をする
ポイントは河口から1kmほど上流にあがった一帯、メインの川が大きく湾曲しながら流れているところに外側からもう一つの川が合流している。
水面の様子を見る限り、合流点の内側にかなり大きな瀬が伸びている。
ここまではよくある状況だが、非常にいいと思ったのは右側のシャローの張り出しである
これだけ張り出していると流れは左側にヨレながら加速し、左からの流れとぶつかり合う
まさにぶつかっているところは波がワサワサと立ち、絶好の雰囲気を醸し出している。
黄色い線が流れで、ピンク色の部分がシャロー。
昨日の川以上に透明度が高い。しかも、多少縁が欠けたとはいえ、明るい満月が頭上に輝いている。
そして街並みも明るい。ただ、車のライトが大きく当たらないところが好ましい。
時計を見る。23時5分。下げ潮はそれなりの勢いで流れている。
あれだけヨレていれば、すでに魚が入っていてもおかしくないだろう。
ゲーム開始。
写真、右の護岸際に降りる。
ブーツだと、まだ岸際ギリギリしか入れない。
しばらくは対岸のヨレにも届きそうもないので、ビリケンのスロージャークで流れの中を攻める。
気持ちいい。
やはりジャーキングメソッドは楽しい。何が楽しいってルアーを動かしているという操作感がいい。
風神ゼータ83ネオンナイトは張りのあるファストアクションながらティップが非常に柔らかいので、こういったスロージャークやトゥイッチに非常に向いている。誰がやっても水面を飛び出すことなく、いいダートアクションが出る。
しばらくは流れの中のジャーキングを楽しみながら、タイミングを待つといった感じ。
10分ほどした時だった。
対岸のまさにワサワサと波が立っている中で、ブッ!と水柱が立った。
いやがった!
しかも、あの独特の真空音、ランカー級だ。
しかし、キャストしたくても距離が遠すぎて届かない。膝下まである磯用ブーツのギリギリまで前に進んだが、届きそうもない。
ウェーダーを履いていれば、あと10mは前に進めるのに。
とりあえずフルキャストをして手前を流してみたが、出なかったのでキャストをやめる。
ヨレから出てきて、バイトするぐらいならとっくにその前にバイトしているはずなのだ。
向こうは完全に瀬に固執している。
対岸の商業施設の照明がスカッと落ちた。一気に暗くなった、チャンス増大。
一度、水から上がって、体勢を立て直す。
ブーツの中にウインタースーツの裾を押し込み、ブーツのひもをぎゅっと締める。
ビリケンからレアに替える。BlueBlue、これ以上進むと、ブーツに浸水するというギリギリまで進む。
レアなら届く!
しかし、ためらった。
ヨレの中の水深が分からないのである。
ここからのキャストだと、ややダウンクロスになる。レアは流れを受けて確実に50センチは潜るだろう。
かなりの確立で根掛かりそうな気がした。
根掛かりでポイントが荒れること、なにより殿堂入り確実なルアーのロストを恐れた。
キャストできなかった。
レアから阿修羅にチェンジしてキャスト。
微妙に届かないが、ラインスラッグでヨレの端っこをかすめる。
出ろ!
出ない。
そうだ。願うだけでは出ない。
考えて動け。
まだ時間はある。焦ることはない。
対岸もみるみるうちに干上がり始め、川幅がどんどんと狭くなっている。
魚もこっち側へ近づいてきている。僕も少しずつ前に進んでいく。
一発で獲ってやる。
バシュッとまたバイト音。
今度のはサイズが小さそうだ。フッコクラス?
魚が複数いるのか?
しかし、東京では考えられないスピードで水が引いていく。
時計を見る、23時45分。
ルアーをX-110SWに替える。
ん?
突然、後ろからライトで照らされた。
また警察だ。なんか事件でもあったのか?
警察官「あんた、釣りしよると?」
僕「さっき職質したばかりじゃないすか。」
そもそも質問の答えになってないし、しかも完全に失言だった。
警察官「いいけん、ちょっと上がってきて」
ここでまた5分ほど時間を取られる。
スズキを釣っているという話をすると、
「ほぉ〜こんな所でな〜、すごいばい!」
と、ライトで海面を照らし回す。
やめんかっ!(もち心の中で)
「寒いので、風邪引かないように」
と非常にありがたみのある忠告をしてお巡りさんはパトカーで去っていった。(非常時でもないのに、回転灯つけるなって)
赤い光が見えなくなるまで見送ってから、走ってポイントに戻る。
いくぶんか潮が引いた。
水の中を静かに、かつ急いで進む。
射程距離に入った!
X-110SWをフルキャストする。
川の流れは右から左、風もそよそよと右から左。
瀬の上流にポトリと落ちる。
右にロッドをあおりラインスラッグを取る。
そのままロッドを左に倒し、順手でジャークを入れる。
豪快なまでのヨレの中をバシッバシッと速いジャーキングで流す。
水は澄んでいるし、月明かりもかなり明るいが、渦巻く流れの中とスライドダートで見させない。
ヨレから出た後は、スロージャーキングで回収。
出ない。
もう一度キャスト。
ワンテンの着水とほぼ同時に、10m程下流でゴッバァ!と水柱が立つ。
そっちにいるのか!
下流側にロッドを倒し、少し流しつつ、ジャーキング。
ググッ!
食っ・・。
乗らない・・・。
小さい?
水柱を立てたのはデカかった。70はある。
食ったのはフッコのような感じだった。
やはり複数いるようだ。
腰が痛い。
いつの間にかかなり前かがみになっていた。
後ろの光を気にしすぎていた。
一度、腰を伸ばして、もう一度前かがみの戦闘態勢に入る。
デカイ水柱が立ったとこまで、届かせたい。
魚がいるのはおそらく瀬の落ち込み。そこに何とかプラグを持っていきたい。
ワンテンより飛ぶハンマーか?一瞬頭をよぎったが、X-110SWのまま継続。
息を殺してジリジリと前に進む。
この緊迫感。まさに生きている実感だ。
さっきよりヨレの中の波の立ち方が少し弱くなっている。
まずい。もうすぐ時合が終わってしまう。
少し焦った。
左足を前に、更に進む。
左足に冷たい感触。ブーツの中に浸水してきた。
そこで足を止める。
狙い澄ましてキャスト!
水面とほとんど平行、低い弾道でX-110SWがヨレの中へ吸い込まれていく。
着水直前で、ベイルを戻し、ラインスラッグを取った状態で着水させる。
そこからジャーク。
ググッ!
乗った。
魚が走る。テンションが掛かるのを待ってバッドまで絞り込む様にアワセを入れる。
ザバババッ!
水面から魚が飛びだした。
あ、小さい。
ああ残念。でも慎重にファイト(笑)
ところがバレてしまう。
40センチぐらいだった。スズキとフッコが混在している。
片っ端から釣れればいいけど、そんないい話はない。
ルアーサイズを上げるかどうか悩んだが、12センチだってこのシャローのフッコは食ってきそうだ。
パッシュ!
そこにまた真空音。
まだいる。
気持ちを決め、もう5歩、足を進める。
また左足に浸水する。そこから風の合間を縫ってキャスト。
着水ざまにジャーク。スライド幅50センチぐらいの稲妻ダート。
出ない。
もう一度キャストするが出ない。
ハンマー13センチに替える。
風神ゼータのブランクスをぶん曲げてフルキャスト。
瀬の上にどぼんと落ちる。
ジャークしようか迷ったが何もしないで流す。
出ない。
再度キャスト、また出ない。
5投ほどしたが、出ない。
投げすぎた。追わせて食わせきれなかったかも
一番嫌いな展開だ。変え時を誤った。
ルアーケースを取り出す。
レアのBlueBlueに目が行く。俺を出せ、そう言っているようにも聞こえたが・・。
ここはX-110SWに替える。
一度、腰を伸ばす。
大きく振りかぶって高切れ覚悟で思いっきり振り抜く。
川面と平行にX-110SWが風を切って飛んでいく。一番飛んだ。完全に瀬尻の中に吸い込まれた。
着水、ただ巻きしてラインスラッグが無くなり、X-110SWが泳ぎ出す感触が伝わってきてから、ジャーキングを入れる。
3回目のジャークの直後、一瞬ラインの張りを感じた。PEラインだから感じられるこの違和感。
直感で食ったと判断する。
そのまま、もう一度ラインスラッグを取ってジャーキングを入れる。
こっちが期待した通りにティップが入っていく。
そのままリールを巻きながら、ロッドを立てた。
風神ゼータのブランクスがきしみをあげて、曲がりきった。
瀬の裏側だけに最初で負けると後がきつい。
かかとを上げ、大きくロッドを上にあおって魚を浮かす。
ドッバァ!
うおわおうわぁぁ!
また、でかいっす!
一転して、魚は下流に向かって20m以上走っていく。
自分の下流に水面に浮かぶブイが見えた。まずい。
X-110SWはフックが6番だ。切られるよりは、フック伸びを選ぶべきか。
ドラグを1回転閉め、右方向、川の上流側にロッドを倒してテンションを掛けまくる。
自分も川の中に少し進む。右足の中にも浸水してきた。
絶対に獲ってやる!
魚は一瞬止まったが、豪快なトルク感で更に下流へ走る。
ドラグが悲鳴を上げ、風神ゼータのガイドがきしむ。
その瞬間、テンションが消えた。
□△★!
声にならない悲鳴を上げて、川を蹴り上げる。
またやっちまった。
6番フックじゃ獲れないって。
ブイがあるのは分かっていた。ファイト方法を誤った。強引にやりすぎた。
未熟・・・。
しかし、X-110SWのダートは一撃必殺だ。
二軍に落とすには惜しいプラグだ。何とかしてくれ。メガバス。
頭に来て、河原の石を蹴りあげる。つま先に激痛!
これで少し頭を冷やした。頭上の満月を見上げた。
時計を確認する。0時20分。
あ〜あ。
1m近くはどう見てもあった気がした・・。
その時だった。
バッシュッ!
はっ!
と背後を振り返った。
まだ魚がいる。
しかもデカい。
ヨレがほとんど消えかかっている。
急いで元に位置に戻る。
水面を見る、さっきX-110SWを食った位置。
そこにいるのか?
ライズを待つか?
いや、勝負しよう。
キャストしようと人差し指にラインを掛けて気が付いた。
X-110SWのフックを見る。
2本がリングごと引きちぎられている。1本も完全に伸ばされていた。
これじゃダメだ。
僕も落ち着いてない。
ルアーケースを取り出す。
X-110SWを替える。
ちなみに前のカラーはスターダストイワシ、後のはサンセットクルージング(だったっけ?)
ど派手なピンク色だけど、この状況ではカラーは関係ない。
ブーツの中はもう水でグチャグチャだ。
何が、繁華街に飽きたビジネスマンの新しい夜遊びだ。
(単なる水遊びではないか、と)
でもいいのである。
楽しいのだ。
川の中に進む。両足に浸水する。
絶好の位置に立ってX-110SWをキャスト。
これ以上無いところへ落ちた。
ラインスラッグを取ってジャーク。
食えっ!
神懸かれ!
ホントに凄いことが起きた。
4回目のジャークでティップに違和感。
5回目のジャークで、アワセる意識のストローク大きめでやる。
ガッ!
バッドから風神Zが曲がる。
一投で出ちまった!
水中で首を振る感触。
これまた大きそうだ。
あっ
と、気が付いてドラグを慌てて1回転緩める。
危ないところだった。
魚が走り出す。すっげぇトルク!
これが長崎のスズキかよ!
ロッドを立てて、僕も下流へ移動する。
20m下流のブイの上をラインがまたぐ。
その下流側でファイトする。
魚はおとなしい、何度か突っ込むものの、先ほどの魚に比べたら、底力を感じない。
何度かのエラ洗いをなんなくとこなして、ランディング。
岸際で大暴れする魚を抑えつける。
とりあえず起死回生ということで。
計測する。
超弩級86センチ!
立ち上がった僕は改めて、魚を見下ろした。
さっきの魚のことを思い出したら、膝がガクガクと笑い出した。
もしかして僕はとんでもない化け物を
バラしてしまったのではないだろうか。
今のような感じで、魚をいなし、障害物を交わすファイトを試みていたら・・・。
両手まで震えだした。
魚をそっとリリースする。
86センチで十分じゃないか。そう思いたかったが、とても思えなかった。
あれが86なら、あの捕食音は?トルクは?重量感は?
実際に引っ張り合ってしまった以上・・・。
逃がした後で、X-110SW付きの写真を撮るのを忘れたことに気が付いた。
またメガバスに怒られるな・・。
ほとんど不眠不休で挑んだ4日間だった。
長崎、このままでは終われない。
明日から非常に重要な仕事が始まる。
それを犠牲にすることは、僕にはできない。
チャンスは一週間後、新月の大潮。
僕は手帳に干潮時刻を書き込んだ。
使用タックル |
ロッド |
アピア 風神ゼータ83Lネオンナイト |
リール |
シマノ ステラ3000AR |
ライン |
東レ シーバスPE 1号 |
プラグ |
ミラクルワークス ドカポップ12cm・阿修羅
邪道 ヨレヨレ〜
メガバス X-80SW・X-110SW |
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