村岡昌憲の釣行記。東京湾のシーバスからその他節操無く色々と。

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Area8 - Stage5 〜 届け、月夜の下の蒼き想いよ 〜

2003年3月13日 港湾部シーバス

 

 

 

ずいぶんと時間が空いた。Stage4からほぼ一ヶ月。

唯一、新月の夜に東京から来た友人と3時間ほど竿を振ったのみ。

その時は雨で濁りも入り、絶好に見えたが全くダメだった。

 

無心でロッドを振っている時、ふと思うことがある。

誰がために竿を振るのか?

もちろん、誰のためでもなく自分のためだ。

しかし、プロ活動をしていると、それを長く続ければ続けるほど、それだけではなくなってくる。

 

アングラーとなった自分の道具、すなわち、ロッドに、ラインに、ルアー。

その、それぞれの道具に、それを作る人たちの想いを宿す。

 

 

スズキなんて、ただの魚なんだ。

しかし、そのただの魚を釣るだけのために、人が情熱を掛け、想いを込め、作り上げる道具がある。

その情熱と想いを背負い、アングラーは広大な海面に思いを馳せる。

そういう楽しみ方があってもいいと思う。だから僕は作り手の顔が見える道具が好きだ

 

 

プロともなるとその想いはプレッシャーとなって両肩にのしかかってくる。

その想いの重さは決して軽いものではない。釣れないと判っていても、行かねばならない時もある。

取材スタッフの疲れた表情に逃げ出したい時でも、黙々とわずかな可能性を信じて釣り続けなくてはいけない。

 

そんな時に忘れてはならないのが、いつも励ましてくれる仲間の声。

ここを読んでメールをくれたビジターのみなさんの文章。

そして、この単なる魚釣りサイトに勝手に感動してくれた、人生に悩んだ人たちからのメール。

そんなのも、ぜんぶまとめて、こうブイヤベースみたいに煮込んで全部背負ってしまう。

 

もちろん釣りをしている間なんてそんなことは忘れている。

でも、うまくいった時に思い出す。感謝の気持ちを噛み締める。あんな気持のいい瞬間はそうそう無い。

まじめに一所懸命にやってないとわかんないことってある。

 

想いを背負えば、期待を背負えば背負うほど、そんな時の喜びも半端ではない。

それを改めて思い知ったのが、あのとても大きな魚だった。

こうして自分が関わった製品が周りに多くなるとおのずとそれを実感することも多くなる

 

 

そうそう。

風神ゼータ83Lネオンナイトについて、いっぱい問い合わせメールを頂いた。

発売時期はよく知らないんだけどそろそろなんではないだろうか。

今月末のシーバスマガジンに色々と書いているので、興味のある方は読んでみて。

 


見た目だけじゃなんにもわからんけど、こんな感じのロッドです。


釣果には関係ないけど、デザインはカッコイイっす。

 

東京に戻ったら、開発中の7.3ftと6.8ftが佳境に入る予定。

これも83Lと同じで、普通でないロッドになる予定。これも単なる馬鹿者用ロッド。

コンセプトはどっちもまだ内緒。

 

 

 

干潮時刻2時間前に釣り場へ。

今日は潮の動きがいまいちまだ悪い。

大きく潮が引かないので、最初から瀬ではなく、ブレイクラインを狙っていく展開を選んだ。

またギリギリ立ち込むことになるだろう。

ということで、ブーツへの浸水対策をすることに。というか、ウェーダーにしたくなった。

 

ボトムはBawoの防寒スーツだ。海水の中にいても水が染みてくることはない。

ブーツも当然。するとその継ぎ目さえ水の侵入を押さえ込めればいいということで、継ぎ目にサランラップをグルグルときつく巻き込み、その上から養生テープでサランラップの継ぎ目を抑える。

見た目はどこぞの素人さんがやってるの、ってな感じだけど、今日のポイントにも先行者はいない。

 


ふふふ。完璧である。

 

遊びってバカバカしい方が楽しい。

 

 

早速釣り場へと向かう。

ポイントは目の前にただ川が流れているだけの何も変哲もない場所。

前回、大きな魚をバラした流れの合流点の数百m下流側である。

今日の潮位では合流点でまともなゲームはできないだろう。

ウェーダーさえあれば可能だろうけど。

 

右側に漁港の入り口があり、そこの船道がどう絡んでくるか。

流れをじっと見据える。

今宵も風が無い。静かに銀色に輝く月が海面を照らす。

美しい。静かな世界。

そこに僕は少しずつ立ち込んでいく。

かなり遠浅だ。

 

 

川の流れは右から左へ、ただ単調に流れていく様に見える。

立ち込んでいくうちに少しずつ流芯の様子が見えてきた。

流れの微妙なぶつかり合い、それが海面に押し上げられる部分に変化が出る。

その位置と川の流れの速さを逆算すると、上流に何があるかを推測することができる。

船道は残念ながらしっかりとは掘り込んでいないようだ。道と言うより一気に広がっていく感じになっていると判断した。

この広大な遠浅なシャロー。そこを潮が流れていく。そこにワンポイントを見いだしたい。

開発中のアロウズレアフォースをセット。とりあえず大遠投してゆっくりと大きくU字を描かせる。

泳ぎを確認しながらいくつかのプロトモデルを試していく。

途中、川の中からアロウズに電話をし、技術的な打合せをしていく。

視野はホント数pの世界。悪いけど妥協はさせないし、したくない。

重要なのはロッドで引っ張った時の泳ぎでなく、いつもと同じように流れの中でU字をデッドスローで描いた時、まさにそのUターンの瞬間の深度とアクションなのだ。

 

しかし、視線は上流側のひとつの流れの浮き上がりに夢中だった。

遠くからでは判らないが、確かに何かがある。かなり大きなカキ瀬か漁船ぐらいが沈んでいるのではないだろうか。

レアフォースから、集魚効果抜群のドカポップに変え、流してみるが魚がいる気配はない。

 

やはり気になる。

行ってみるか。

 

一度、岸際まで戻ってから歩き、真正面にヨレを見据えながらもう一度ゆっくりと立ち込んでいく。

対岸が暗いのと、月も背負ってしまっているので水面がはっきり見えない。

 

ところが、やや深い。

良さそうな場所までとても届かない。

 

意を決する。

更に立ち込んでいく。

ブーツの継ぎ目が水中に隠れる。

 

しばし、立ち止まる。

水が侵入してくる様子はない。

 

前を見る。

もう少しだ。

数歩進む。水圧が膝の裏にも掛かりだした。

 

あ、

 

 

 

あん。

 

 

 

 

 

右足、浸水 !

 

 

うひゃぁ。

 

 

慌てて岸際まで戻る。

ダメージは少なかった。湿った程度で澄んだ。

両足を一度外して中をタオルで拭き、もう一度やり直すことにする。

もっと厳重に。養生テープでなくガムテープを使ってみる。


意地と言います。こういうの。

 

また立ち込んでいく。

今度は完璧。膝裏まで入っても全く大丈夫。

ギブスで固められた感じなので、歩き方はぎこちないが、釣りをする分には関係ない。

目の前のヨレを見る。やっぱり瀬だ。なにかある。

ここ以外には変化のあるところは見あたらない。

 

ここで勝負。

 

立ち位置は30度近くの上流側。文句なし。

相変わらず透明度が高い。

ギリギリ届きそうな距離感の場所からレアフォースをフルキャストする。

ダウンクロスで瀬の下流側に着弾。

水面下5p、そのレンジを変えずに大きなU字を描く。

どうか・・・?

 

 

 

出ない。

数投ほど上流側も流してみたが出ない。

魚が付いてないな。

X-110SWに変える。もう少し立ち込む。

 

 

 

射程距離に入ってからキャスト。

流れの激しくヨレる中をスライドダートアクションでひらめかせる。

しかし、出ない。

 

魚がいない。

何投かしているうちにまたブーツに浸水してきた。

気持ち悪い。

 

 

 

あたりを見渡した。

今日は出る気がまったくしない。

一気にやる気が失せる。

終わりにした。

結局水遊びに終わってしまった(笑)

 

 

また明日。ホワイトデーの夜。

今回も東京から友達が遊びに来てくれる。

そして長崎で知り合ったアングラーたちと初めて一緒に竿を振る。

楽しく行こう。願わくば1本。

 

 

使用タックル
ロッド アピア 風神ゼータ83Lネオンナイト
リール シマノ ステラ3000AR
ライン 東レ シーバスPE 1号
プラグ ミラクルワークス ドカポップ12cm・阿修羅12cm
邪道 ヨレヨレ〜
メガバス X-80SW・X-110SW
   

 




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