村岡昌憲の釣行記。東京湾のシーバスからその他節操無く色々と。

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Area8 - Stage6 〜 届け、月夜の下の蒼き想いよ 〜

2003年3月19日 長崎市内 シーバス

 

 

 

先週末は実にいい釣りだった。

東京から友達が一人、こっちで出会った友達が二人、佐世保と長崎から集まった。

4人でポイントに入る。みんなそれぞれのスタイルではじめる。

ロッドの長さもルアーの大きさやタイプなどもてんでばらばら。他人のスタイルなどあまり興味がないのか、それともよほど目の前の状況が絶好であると感じたのか、あっという間に4人はちりぢりになった。

 

はじめて30分ぐらいしたところで、いよいよ流れがきつくなり出す。

今まで静かだった水面にベイトの気配が一気に出てきた。

 

違和感。

魚が来てる?

 

すぐ上でやっている峯さんも気配を感じていたらしい。

2人ともそれは静かに淡々とその時を待った。

 

 

突如、僕の携帯が鳴る。

一番上流にいるふくちゃんからだ。

最下流にいた僕が走り出したのと同時に、他の2人も自然と走り出す。

岸際でしゃがんでいるふくちゃんに近寄ると、そこにはとても大きな魚が横たわっていた。

 


88cm。いい魚ばい。 長崎まで魚ば釣りに来た甲斐あったけんね。

 

自己最高記録なんだそうで、おめでとう。

やはり魚は来ていたのか。

すぐさまさっきいた釣り場に戻る。

 

しかし、それから1時間ほど粘ってみたが、水面もまた静かになってしまった。

雨も降り出したので早々に撤収。

その後は長崎で朝まで飲んで解散。

楽しい一日だった。

 

 

 

それから4日後、19日になってようやく出撃のチャンス。

夕方19時にホテルを出る。

夕飯を食って20時にポイント着。

川は満潮、たらふく水をたたえている。

満潮時刻の潮位305cm。ここから6時間かけて320pも潮が引く。

川の両岸を一周するように様子を見て回る。

 

興奮してきた。

今日は必殺的な武器がある。

前回に辛酸を舐めた、「自由のサランラップ作戦」の失敗。

それを見て哀れと思ったのか、友人が長崎にウェーダーを置いていってくれた。

これさえあれば、怖いものはない。

そそくさと履き込み準備をする。

 

 

すでにArea8という出張中のお手軽なシーバス・・・というテーマを離脱しているが、もうこの際いいのである。

今回の長崎はなにもかもがめちゃくちゃだったのだし。

長崎という街は日本史上何度と無く、時代の奔流となり、多くの英雄が訪れ、この街から多くのことが始まった。

しかし、不思議と長崎から輩出された英雄や人物を僕は知らない。(僕の浅はかな知識ではという断定で)

長崎には人の思いを受け止める、情熱を高ぶらせる器量がある。

そんな人がとにかく多い街だった。そういう出会いをたくさんした。天領地だったことも何か関係があるのだろうか。

 

 

21時。満潮。立ち込み開始。

川はすでに下げ気配。風はほぼ無風。

 

立ち込むと、足下にもやもやがたくさんできる。(沸かし式のお風呂混ぜる時に出るあれね)

下が海水、上が真水。シャローを非常に高い透明度で流れている。

もやっ気のない完璧なハロクラインが形成されている。

 

そういや、過去のArea8の広島や熊本もこのハロクラインの攻略が鍵だった。塩分濃度の薄い東京湾ではあまり気にならないが、地方に出るとやたらと気になる。

様子を見る限り、下の潮はまだ上げているようだ。

しかし、この潮に乗ってスズキは川の中に入り込む。

今夜も来るだろうか。

 

 

最終セッティングに突入している、レアフォースをセットしてフルキャスト。

思ったより正面からルアーが戻ってきた。

やはり水面より30cmぐらい下ではまだ上げているようだ。

しばらく、30分ほどはのんびりと最終調整を繰り返す。

シリコン製のリップを切ったり削ったりして持っていきたいレンジに持っていく作業。

晴れて月明かりが海面を煌々と照らす。

今日桜が咲いたというのに、ずいぶんと冷え込んでいる。

 

 

しばらくして、下の潮水の層も下げに転じたようだ。

時計を見る、21時45分。

対岸の瀬絡みを撃てる位置に立ち込んでいく。

流れがすでにきつい。一気に下げ出すとこれは危険かもしれないと思い、少し浅いポジションに立つ。

 

 

15分ほどはキャストもせずに、ずっと考え事をしていた。

そして満潮から1時間半が経過した、いよいよ潮が怒濤の下げ潮に向かい加速感を持って流れ出す。

キャスト開始。レアフォースを対岸のブレイクにめがけて打ち込んでいく。

大きなU字を描かせながらニアサイドのブレイクラインも絡めていく。

反応はない。

先日のような小魚の雰囲気もまだ無い。

 

 

22時15分、突然下げ潮が止まった。

なんで?

河口から大きなうねりが押し寄せる。

地形的に大型船が通ることもないはずだけど・・・。

しばし、浅い場所まで避難して波をやり過ごす。

半ば逆流するかの様に下げ潮はやや上げはじめている。

複雑な長崎の海岸線がそうさせるのだろうか。

 

 

22時30分、一転して川面に音を立てながら下げ潮が始まった。

面白いじゃん、長崎。

 

 

僕はにやっと笑うと、また川に立ち込んでいく。

瀬の上はヨレが大きく下流に向かって伸びるほど流れが当たっていた。

すぐには投げない。投げたらいけない。

2分ほど、ヨレの中に目を凝らす。魚の気配は出ていない。

 

 

とりあえずダウンクロスでキャスト。瀬の上にピタリとレアフォースを落とし込む。

水面下漂い系アクションを狙ったこのプラグはダウンクロスこそ正攻法。

瀬の上をナチュラルドリフトで流し込んでいく。

何投かしたが出ない。

ううむ。

 

 

これで出ないといないと思ってしまう。

試しにX-110SWに変えて、ジャーキングで誘ってみる。

海面をほうきで掃くように、ティップを払う。

スライドダートで瀬の上を流していくが、やっぱり出ない。

 

 

他の場所を当たってみるか。

少し下流の瀬みたいなところに移動する。

前回はベイトっ気もあっていい感じでったが・・。

 

しずしずと近寄っていく。こっちも海面は静かだ。

潮の押しが強く、膝上ぐらいでぐぐっと押される感じになる。これ以上立ち込むのは危険だ。

何も光がない真っ暗な河口方面を見て、少し不安になる。

 

頭上には銀色に光る満月。

水の激しいヨレはすぐに見つかった。

川の中に何かがある。

そのヨレを川面に映る対岸の工業施設の灯りを使って観察する。

うーん、いまいちだ。たいしたことがない。

X-110SWをフルキャストで打ち込む。ピンポイントで着水。

そこからスライドダートで誘う。

 

出ない。

ただ巻きでも誘ってみたが出ない。

 

潮はいい感じで下げているのだが、小魚の気配が4日前と違って全く見えない。

ライズの様子もないし。

もう上がろうか。でもこれが最後かもしれないし。

 

 

そう思って、ここはいったん休憩することにした。

近くのほっかほっか亭で鳥南蛮弁当を買う。

最初のポイントの駐車場に車を止めて食事。

川面からは目を離さない。こういった小河川でよくある干潮寸前のライズに期待。

 

食べ終わってからも、しばらく川面を見つめていたが、やがて眠りに落ちていた。

30分ほどウトウトしていたようだ。昼間の仕事もいよいよ大詰めで忙しさも最高潮。

 

 

 

僕を起こしたのは携帯に届いたメールの着信音だった。

こっちで知り合った一人の女性からの

「ありがとう、そしてさようなら。」

のメッセージ。

そして僕も同じメッセージを返した。

 

 

長崎最終章、僕を巻き込んだ色々なドラマが一つ一つ幕を閉じていく。

12月の雪の日、Elegyにふと思い出した遠い日の恋の話を書いた。

まさか、あの日の再現がこの長崎で起きるとは思いもよらなかった。

また、これも一つの錯誤なのだろうか。

 

 

 

車から出る。

河原に降りて川面に近づく。

川幅はすでに4分の1まで小さくなっていた。

海面の、海面の異常さに気付いたのはその時だった。

 

 

来てる!

 

飛び跳ねるように僕は車に駆け寄った。

トランクからタックルを取り出す。

X-110SWをセットし、河原にそっと駆け寄る。

しゃがんで海面を観察する。

 

 

どこにいたのか、ベイトが追いつめられていた。

イナッ子だ。

数は数百程度だが、イナッ子の緊張感が見て取れる。

ふと瀬を見るとすでに流れはなく、干上がる寸前だった。

この中のどこかに・・・。

 

 

軽く正面にキャストする。ミディアムリトリーブで普通にただ巻きする。

出ない。

下流側か?足を動かすか悩む。僕のいる場所はまさに4日前にふくちゃんがワンチャンスをものにした場所だったからだ。

しゃがんで待つことにした。時計を見る。0時40分。

3分ほど待った瞬間だった。

 

 

 

ボシュッ!!

 

 

 

下流側30m程で捕食音。

 

 

 

思わず中腰になる。

ニアサイドのブレイクラインなので気配を悟られてはいけない。

かなりの街の光を背負っている。

満月の位置を確かめる。

 

 

その場でしゃがみ直した。

ベイルを返し、人差し指にラインを掛け、キャストの体勢を取る。

 

来い!

 

 

祈る。

 

瞬間、上流側のベイトが騒ぎ出した。

体勢を動かさずに、風神ZネオンナイトのティップをひねるようにX-110SWをキャストする

着水直後からミディアムスピードでリトリーブする。

ダメ。

 

 

しゃがんだまま、改めて上流をむき直す。

ベイトは岸際でまだざわついている。

岸から5m程の距離にフルキャスト。

そこからティップを上に上げて軽いスロートゥイッチで誘う。

 

ガガン!

 

 

よし食った!!

 

 

向こうが体を反転するのを確かめてから軽くアワセを入れる。

ドラグを少し緩くして、6番フックをかばう。

しかし、魚はそれほどでもない。

グイグイと元気な引きを見せるが、1分ほどでランディング。

 

サイズはともかく、なんかお得な気分の一尾。

 


60pあるかないか

 

 

 

すぐさまリリースして、次を狙う。

ベイトはまだ騒がしい。海面がしきりにざわついた音を立てる。

一尾だけという事も考えづらい。

80近いサイズの捕食音が出ることを願う。

 

 

 

が、10分後にはまた静かな海面になってしまった。

僕は立ち上がった。

もう1回できるかどうか。

 

 

使用タックル
ロッド アピア 風神ゼータ83Lネオンナイト
リール シマノ ステラ3000AR
ライン 東レ シーバスPE 1号
プラグ アロウズ レアフォース
邪道 ヨレヨレ〜
メガバス X-110SW
   

 




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