Area8 - Stage7 〜 由良川を訪ねて 〜
2006年11月16日 京都府 由良川
形を変えていく雲を見ながら、僕は飛行機の窓から色々なことを考えていた。
このArea8が3年前の日付で止まったままだったように、僕の時間もあの時から止まったままなのかもしれない。
ありふれた日々にまぎれた幸福をすっかり見失って、瞳の中に映るものがどんどんと醜くなっていく地獄のような日々。
そこからの脱出を願って、伸ばした手が何かをつかんだ瞬間に、時は轟轟と音を立てて流れ始めて思い出と未知なる未来を作り出した様に思えた。
その中で溺れまいと必死に泳いだ自分が辿り着いた岸辺は、結局同じところで。
きっと今までにも多くの人が学んだ経験を、何の学習もなく自分もまた同じように。
日もすっかり暮れて、ほとんど地上の光のないところを飛行機は飛ぶ。
やがて真っ黒な地上の闇の中にぽっかりと浮かぶ滑走路が見えてくる。
そこに向かって飛行機は吸い込まれているように高度を下げていく。
降りるところの見つからない旅人を乗せた飛行機は、迷いも見せずに滑走路へ降り立った。
兵庫県の豊岡のそばにある但馬空港。
日本とは思えないローカルさがたっぷりある空港だ。
空港からはレンタカーを借りる。
今回はもちろん仕事である。
天橋立近くにある導入実績での見学会。
前日入りして、明日は朝から実績装置の作動点検をして、最高の性能を発揮した状態で見学者を迎えるのが目的である。
となると、今晩はかなり時間があるので、冬のウェーディング機材を一式持ってきた。
荷物は背広に作業着にウェーダーにロッドにと盛りだくさん。
ナビゲーションを、京都府の天橋立にセットする。
まずはホテルへ向かう。
出るなり雨が降り出す。
せっかく持ってきたのにこれじゃぁ・・・。
ホテルに向かう途中に釣具屋を発見。
当然立ち寄って情報を収集する。
壁一面にエギが。いかに釣れているかってことなんだろう。
イカが好調ならイカでも良いなと思っていたが、話を聞いてみると、イカはもう終わりだそうで。
逆にシーバスはこれからだよということで、気合いが入る。
お礼にマールアミーゴを一つ買って帰る。
ホテルにチェックインして、さあ釣り場へ出ようというところで、ホテルのスタッフと談笑した際に、
松葉ガニが解禁しているという情報を入手してしまった。
カニは身なら松葉ガニが一番旨い。
ミソなら上海ガニだ。
どっちも味わいたいならなら、毛ガニだ、とどこかに書いた気がする。
松葉ガニは捨てがたい・・・。
少し時間は掛かるが、先に松葉ガニを食べることにした。
町中にある名店へ。
橋立の名店、御番所。昨年も仕事でこっち来た際に2回寄ったとこ。
料金もそれなりに高いが、味はそれ以上。価格満足度すこぶる高し。
ここは本格割烹なので、普通この後に釣りに行く人が行くところではない。
お酒も当然飲むところである。
が、もちろん酒を飲むわけにはいかないので、
店に入って事情を話して、特別に松葉ガニ丸ごと定食を作ってもらうことにした。
価格は6500円也。
日本人なら一度は本物の松葉ガニを食べるべし。
ロシアで獲れて水揚げされた偽物の松葉ガニがはびこる中、本物の松葉ガニをきちんと出してくれるお店はあまり無くなってしまった。
有名なお店でもテレビのレポーターが来る時だけは本物の松葉ガニを食べさせ、その放映を見て来た観光客にはロシア産を食べさせている。
活きていればいいってものじゃない。ロシアで獲れて2週間ダイエットしたカニが美味いはずがないだろう。その差はきっと知らない人が想像している以上にあるのだ。
本物の味を食べれば、年に一度しか食べられないものに6500円払うのは安いと思うはずである。
カニ味噌は濃厚かつ甘みがたっぷりで、身はとにかく甘く柔らかい。
おまえらにはやらん!
カニ1パイを平らげると動けないほど食べることになる。
満腹も満腹で、お会計。
由良川を目指す。
道中の気温計が6度を指している。
真冬の装備で正解だった。
橋立から30分ほどで、由良川河口に着いた。
まずはざくっと川を見てみようと思って、川沿いの道を上流へ目指す。
思っていた以上に自然がたくさんある大きな河川である。
大きすぎて狙い所が見つけづらい。
ましてや夜に到着して、いきなりポイントを見つけるのは至難の業だ。
とにかく橋が遠い。
河口から最初の橋までずいぶんと走った。
荒川でいえば、河口から最初の橋が千住新橋である。 笑
それまで一切渡ることができないのだ。
スケールでかくてワクワクしてくる。
最初の橋を渡りながら、川を観察するが暗くて何にも見えない。
東京のアングラーは灯りに慣れているので、地方の暗さに苦戦する。
車の中からでは何にも見えない。
次の橋で、ようやくまともな灯りがあって、川を観察することができた。
一ヶ所、良さそうな場所が見えたので、そこで始めることにする。
タックルをセットし、ウェーダーを着込んでから釣り場へ降りる。
途中、ちょっと苦戦したがなんとかポイントへ。
テトラが入っていて、流れが少しヨレている感じ。
だけど、ポイントに入ってみれば全然たいしたこと無い。
ほとんど流れていないに等しい。
日本海側だから、干満の差が小さく、流れも緩いのだろうけど、それにしてもこの程度とは思わなかった。
荒れた時はすごい川なのに・・・。
まあ、せっかくだし少しやってみることに。
ロッドはダイワのモアザンモバイル9ft。
もう2年近く出張時の時は一緒に全国を回っている相棒である。
リールはセルテート2500Rカスタム
ルアーはレアフォースで勝負。
1投目はクロスで、2投目はややダウンで、バイトもなく、流れも緩い。
こりゃダメだなと思いながらさらにダウンクロスでキャストした3投目。
10mほど先まで泳いできたレアフォースにいきなり、ゴン!とバイト。
お?
おお!?
情けないことに、まったく準備できていなかった。
グググッとロッドが曲がったところで、水面にエラ洗いに出たスズキに、何もできない。
あっさりと外れて、思わず天を仰ぐ。
でも、いるじゃん!
いるじゃん!
一気にテンション上がる。
が、その後はバイト無し。
移動することに。
それにしてもゴミが多い。
美しい川が汚れているのは悲しい景色だ。
片手分だけでいい、ゴミを拾う。
帰りのこと。
行きも苦労した難所で、ロッドをしこたまぶつけて、嫌な音が・・・
次のポイント。
さらにだいぶ上流に走って、いい橋があったのでたもとに車を止めて、橋の上から眺めていたら、すごく良い場所を見つけた。
川自体が細くなって、瀬になっていそうなところ。
オチアユのシーズンと重なっていれば面白そうな釣りができそうなところだ。
車が止められるところから結構歩いたが、ポイントに着く。
真っ暗な中で目をこらして、流れを読む。
音が出るほどではないが、水面にヨレが出ている。
90UPが出るというより、60〜70の連発がありそうな気配だ。
もちろんそれでもいい。
ブーツをセットして、まずはアップクロスでヨレの一番濃いゾーンにキャスト。
バキッ!
うげっ!
やっぱり!
さっきぶつけたので、驚くというよりやっぱりという感じだったが、ロッドがすごい音を立てて途中から飛んでいった。
恐る恐る巻き上げてみると、継ぎ目とは関係ない部分でバッキリと折れている。
4ピースが5ピースになってもうた。 泣
モバイルロッドではダントツの剛性があってムチャクチャ気に入っているロッドだったのでショックは大きい。
出張アングラーに予備もあるはずもない。
が、意地はある。
そこで、折れた部分を全部カットして、
モアザン4.5ft に仕上げる。
もちろんアクションは、超ヘビー。
ヘビカバアクションもできる世界で1本のロッドだ・・・。
フルキャストで飛距離20mとしょぼいが、あきらめずにキャストし続けた。
最後はどうしても行ってみたかった河口でフルキャスト(20m)
夜更け、長崎で宴会中のオガケンやクウルマン、あんチャン、ミネさんなどから次々と電話が。
風もなく、穏やかな波の音だけしか聞こえない由良川の川の中に立っている自分と、電話の向こうのバカ騒ぎ声。
対照的だなぁと思って、見上げると、雲の切れ間からすごい数の星が見えた。
僕はロッドを降ろした(4.5ftだけど)
翌朝は仕事をきっちりとやる。
この国には、まだ原風景が残っている。
東京が、都会が失った大切なものを守っていってください。
また来るぜ、由良川よ。
使用タックル |
ロッド |
ダイワ モアザンモバイル9ft |
リール |
ダイワ セルテート2500Rカスタム |
ライン |
東レ シーバスPE 1号 |
プラグ |
アロウズ レアフォース
原工房 ブーツ
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