Area11 - Stage2 〜 あの日の月光と、今の僕と 〜
2005年2月25日 長崎県長崎市・平戸市
2年前に長崎で初のメーターオーバーを釣った。
その潮周りと全く同じ地、同じ潮、そして同じ月明かりの下。
そこでロッドを振るだけでもいい。そう思ってこの旅を計画した。
この2年間、何がどう変わったのか。
思い出は色褪せても、物語はまだ続いている。
確かめたいことが山ほどあった。
そして、ヒラスズキも絡めての遠征釣行。
24日に長崎入り。トリトンのSweep氏がさっそく合流。
夜は思案橋と馴染みの店を回る。
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馬次郎は期待通りに旨かった。
予想以上に旨いものは多くても、期待通りに旨いものを出す店は少ない。
長崎にはそれがある。
その後は馴染みのバーへ。山下氏も合流して夜明け近くまで飲み歩いた。
昼過ぎに大野ゆうきに叩き起こされる。
長崎チャンポンで最も旨いと思う大波止の永楽苑でチャンポンを食べて野母崎へ。
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寝起き顔ですまん。
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少し風が弱いがサラシはそこそこ出ている。
ウォーミングアップがてら磯に立つ。
魚は出ない。
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明日はもう少し風が吹くだろう。
今晩から2日間ほとんど寝ないというアホな日程が続くので、早めに撤収する。
気づいたこと。
西の果ての海岸は漂着したゴミで一杯だった。
地球の海を汚染するオイルボールや発泡スチロール、プラスチックタンクなどなど。
これらは釣り人の努力だけではどうしようもないし、ましてや日本の努力でもどうにもならないことだ。
しかし、日本中の釣り人が海岸を自分のできる範囲で綺麗にする活動を始めたらどうなるだろうか、と思う。
海岸線が昔のように綺麗になることはないのかもしれない。
だけど、釣り人が海を綺麗にしているという認識は作られる。
釣り人が海岸線から消えると、ゴミを拾う人がいなくなるという考え方が生まれる。
今のメディアや一般市民が持つ、釣り人が海を汚しているという認識くらいは変えられるかもしれない。
釣り人が有益な存在になれば、行政の扱いも変わる。
その為には僕たちから変わらなければならない。
最初はついででいい。
ルアーマンは空いた片手にゴミを、磯師は空のバッカンにゴミを入れて帰る。
それだけでいい。
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今回は魔法瓶。どこの国から来たんだろうか。
日が暮れてから、市内の川へ。
自分の息づかいと、かすかな波の音しか聞こえない河口に立ち込む。
きんと冷えた空気は、氷のような透明感で、そのはるか頭上に眩しいほどの満月が煌々と輝いていた。
僕は長崎にいた時の事をずっと考えていた。
この時点で振り返れば、あの時は人生最大の激動期だった。
必死に悩み、誠実に選択し、失う覚悟を決め、振り返らずに生きた1年間。
それは飛躍であった。
あの時の選択に後悔も未練もない。だけど、きっと忘れはしない。
記憶の中で生き続ける想いの輝きはこの満月の輝きと変わらない。
これからも激しくなる一方の戦いは続く。
帰ったらまた振り返らずに前に進んでいこう、そう思った。
あの時、目の前と同じように透明な水の中で踊った白銀のメーターは今日は姿を現さなかった。
だけど、自分が釣り、逃がした魚がここにいるかもしれない。
今までリリースした魚はごまんといるが、そんなことを思ったのは初めてだった。
川は静かなまま、潮位を下げていき、やがて生命感は消えた。
3時頃に撤収し、一路平戸を目指す。
途中から峯さんも合流して、7時に沖磯に渡船する。
偶然にも同じトリトンの井手口氏と松本氏も一緒になる。
荒海は磯で白い牙を剥き出して怒号る。
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圧倒的、かつ劇高的なほどの拒絶。
それは常つ国から来た御者のいざない。
誘えないのなら、と容赦なくしぶきが飛ぶ。
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ヒラ3回目でようやくコツがつかめてきた。
激しい波が独特のリズムで磯をかき回す、その一瞬。
そこにルアーがあればヒラスズキは必ず喰ってくる。
しかし、そこにルアーがあることが、いや、あり続ける事が極めて難しい。
押し寄せる波が、引き払う波が、吹き荒れる風が、そこにルアーがあり続けることを容赦なく拒否し続ける。
ヒラスズキの極意は引くことにあらじ。
初めてやった時に名手井手口氏がつぶやいた言葉が頭をよぎる。
その一瞬を見極めようと波を注視していると、やがて心の中にが入り込んでくる。
恐怖心が薄れ出す。足が前へ前へと進み出す。その瞬間にいざなう波が足下を洗う。
我に返って後ろに飛び退く。
振り返ると、次の波で自分が立っていた磯は完全に荒波の一部と化していた。
波にしぶかれて、また全身が濡れる。
なんたる卑小。
荒れ狂う磯に立つことで卑小極まりない自分を容赦なく見せつけられる。
そこは人がいていい世界ではない。
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そこに人が立ち入るのならば、その生命は神に預けるも同然。
「そこに人の意志は存在し得ない。神のみが生死を司る。」
そう言ったのは、登山家の中でも、類い希な才能と挑戦で、孤高の狼と呼ばれた森田勝。
先の大戦とその敗戦。その後の日本に蔓延した拝金主義に抗うかのように、己の生きる道を示し続けたのが登山家や冒険家達であった。
鬱屈や不条理に飲まれた若者達に向けて、命を賭して発し続けられたメッセージは熱く、そして切ない。
事故が起きて、ザイルパートナーが宙づりになった時に
「切ればどちらかが助かると判断した時は、俺はザイルを切る。もちろん俺が宙づりになった時も切られて構わない。」
と言った孤高の狼は、グランドジョラスで実際にその状況になった。
ザイルを切れば自分だけでも助かることができたのに、彼は切らなかった。
そしてパートナーと運命を共にして死んだ。
強さは虚勢であり、弱さは実像であった。
だけど、それが男ではないか。
強さと優しさが混沌とした悲しい一人の男の物語は、今の日本の男が失ったものを、
今もなおメッセージとして発信し続けているように思えてならない。
磯はそれに近い。
万全を期して、安全を心がけても、慢心があればあっという間に命を奪われる。
だけど、だからこそ、生きていることを実感できる。
近くにみんながいるのを確認して、さっきまで猛烈なしぶきの中にあった磯に降り立つ。
時間はワンチャンス。沖の波を見ながら、サラシの中にサラナを撃つ。
磯の間の引き波にサラシの帯が混ざる一帯で、サラナを止める。
その瞬間にガツンと喰った。
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小さいけど満足の一本。
ゆうきも1本。
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峯氏もなんなく1本。
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今日の磯は厳しいらしく、魚は3本だけ。
他の磯に渡っていた井手口氏と松本氏はヒラは出なかったよう。
遠征組に気を遣ってくれたのか、いい磯はこちらに譲ってくれたようだった。
その代わり、メバルをごっそり釣って持って帰ってきた。
夕飯はみんなでカキ焼き。6人で150個食べた。
![](12.jpg)
そういや、メバルは?
さすがに疲労困憊。しかし、残された時間は少ない。
峯家で2時間ほど仮眠して再度出撃。
佐世保市内の川へと挑む。
時合は下げ3分。
満月が水面を明るく照らしている。澄んだ川の水がさらさらと流れている。
川の中の流れが地形で加速した後の払い出しに入る。
入って速攻、僕がレアフォースで1本掛ける。
60くらいだったがランディングでばれる。
続いてすぐに峯氏にヒット。
慎重にファイトしてランディング、なんと87センチ。
![](13.jpg)
ルアーは夕方に僕から差し上げたレアフォース。
「いきなり一軍入りばい。」 だそうで。
続いて峯氏にまたヒット。
今度は81センチ。
ルアーはまたしてもレアフォース。
「すごかね、このルアー。」 だそうで。
やっぱりあげるんじゃなかった(泣)
で、その後も鼻息荒く続けるも、後は続かずやがて時合終了。
ちなみに家で87センチの写真見て、尾びれのヒルに気づいた。
もう少しやりようがあったなぁ、と。
そこから車を飛ばして、長崎市内へ。
夜が明けてトルコライス喰って帰京。
![](14.jpg)
何も問題ない。確実に前に進んでいる。
そんなことを改めて実感した長崎。
お世話になった方々、ありがとうございました。
また来るよ長崎。
Tackle
Data |
ロッド |
アピア
風神Z116MLバッカニア
風神Z93Lフローハント |
リール |
ダイワ
セルテート3000
+
シマノ
ステラ4000DH |
ライン |
東レ
レイジングウォーターナイロン
10ポンド
+
リーダー40ポンド
2m |
ルアー |
スミス サラナ125
ダーウィン カンニバル129
アロウズ レアフォースなどなど |
使用タックル |
ロッド |
アピア 風神ゼータ116MLバッカニア
アピア 風神ゼータ93Lフローハント |
リール |
ダイワ セルテート3000 |
ライン |
東レ シーバスPE 1.5号 |
プラグ |
スミス サラナ125F
アロウズ レアフォース
ダーウィン カンニバル129 |
|