シーバスのルアー釣りにおける潮の攻略法

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Style
第一章
スズキについて知る
リリースについて考える
 
第二章
ヘビカバスタイルについて
港湾部のタックル
河川・干潟のタックル
ライン
ポイント開拓
ルアーの食わせ方
アワセについて
ランディング
小物について
 
第三章
春の攻略
初夏の攻略
・夏の攻略
・秋の攻略
・冬の攻略
 
第四章
ゴミを拾おう
いい男になろう
オリジナルカラー
 
 
 

 

 

 


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〜潮を司る9つの要素〜

 

今回は自分でもやんなるほど長いので注意。しかし、まあ良くこれだけ書いたもんだ。
すっごい暇な時に読むべし。

 

 

はじめに

 

シーバスフィッシングは海の釣りです。

中には川の上流という例外もありますが、ほとんどのシーバスは海にいます。

その海の釣りでどんなターゲットであっても欠かせないのが潮を知るということです。潮を知らないで釣行しているうちは大した釣果は上がりません。

適当にフラリと行って魚がヒットすることはありますが、それはたまたま魚がそこに居たに過ぎないのです。

 この極めて重要な潮。湾奥のアングラーの中には潮に対して無頓着な人が意外と多く見受けられます。釣果において大事なのはポイントでもタックルでもありません。ポイントの潮の状態が結果を左右するのです。

 

その潮を司る要素がいくつかあります。

代表的なものとして挙げれば、9つ。

透明度・光量・潮位・潮周り・流れ・水温・溶存酸素量・塩分濃度・気圧。

これらの要素が複雑に絡み合って一つの潮を作っています。その組み合わせはまさに無限大です。アングラーはその途方もない大きさのパズルに真っ向から挑まなくてはなりません。

しかし、それが釣りの面白さの真髄です。だから一生の趣味と言われるのです。

釣り人の間ではよく潮が良いとか悪いとか使われます。

潮が悪いというのは釣り人の言い訳に最も多く使われますね。僕も使う時がままあります。

潮を知らない初心者の釣り人に対しては非常に都合が良い言葉なので、時には釣り船の船長が使う言い訳の常套手段にもなっています。毎日潮を見ている漁師や釣り船の船長が、潮をよく知っているように、潮は数多くの経験を積むことで、良い潮と悪い潮、つまり魚が釣れる潮と釣れない潮の区別が付くようになります。

これから長々と書いていく潮の解説は僕が長年の東京湾奥で得た経験から書く潮です

ここで大事なこと。僕が悪いと思った潮が、他のアングラーにとっては良い潮となることは十分に考えられます。

 

自分の魚と他人の魚。

この事を頭に入れながら読んでいただければ幸いです。

 

 

 

透明度

 

まずは透明度。いわゆる濁りの度合い。水中の光量と密接な関係があり、ストラクチャーの際で待ち伏せに入ったシーバスがステイする水深を左右する重要な要素です。

同時に水温の上下にも密接に関わる性質があります。

よくシーバスフィッシングにおいてはササ濁りがベストと言われるようにシーバスは若干の濁りを好む性質があります。これは夜間でもずっと明るい東京湾奥の港湾部では極めて顕著に出ま。ササ濁り、つまり水中に差し込む光量が少ない状態になるとシーバスは非常に活発に動き回ります。

回遊型のシーバスは透明度が高い時よりも低い時の方が浅い岸際を回遊しますし、ストラクチャーに付くシーバスはレンジを上にあげ、ベイトを追いかける捕食ゾーンを広くします。

同時にベイトフィッシュも活発に動いて捕食活動をするなど、魚の活性を大きく左右します。

また、適度に濁るとルアーへの視認性が悪くなるためにシーバスはルアーをあまり見ません。魚が足下で反転することが減ります。食わせ方を知らないただ巻きの人はバイトの回数が増えると感じます。だからササ濁りは釣り人に歓迎されるのです。

その濁りとはどんなものか。大きく分けると2つあります。

 

一つはプランクトンによる濁り、次に泥や土による濁り、です。

プランクトンの濁りは粒子が比較的細かいです。土や泥の濁りは粒子が粗く、流れの無いところではすぐに沈殿します。

プランクトンによる濁りはゲームの組立に非常に重要です。ベイトフィッシュの大事な餌となるプランクトンも、中には毒性を持っているものがいるし、大量発生しすぎて水中の酸素を消費してしまうものもあります。

梅雨時の赤潮のように特定のプランクトンが大量発生すると最悪は貧酸素状態を作り出してしまいます。逆にプランクトンが少ない潮は透明度が非常に高い潮になってしまい、こうなるとシーバスは光が水中に差し込みすぎて深場やストラクチャーの奥に引っ込んでしまいます。

またプランクトンはイワシやサッパなど湾奥のベイトフィッシュの重要な餌でもあります。

ベイトフィッシュはプランクトンを求めて回遊しています。プランクトンが発生すると通常は濃緑色や茶褐色の潮色になります。

あくまでも程度ですが、自分にとって最も釣りやすいプランクトンによる濁りを早く知るといいでしょう。

 

 

次に泥による濁り。これが非常にやっかいです。湾奥には悲しいかな2つの泥濁りが存在します。

一つ目は河川が押し流す泥や土から出る茶色の濁り、これは地球上に生物が生まれる前から営まれてきた大自然の現象です。上流から栄養分を多く含んだ土砂が流されてくることで浅い河口域が形成され、そこで多くの魚が育つのです。近年の湾岸開発で次々と埋め立てられていってしまう干潟や中州などもこれにあたります。大雨の後にコーヒー色になってしまった河川でシーバスがヒットしてくるのはたまにしかありませんが、濁りが薄まる河口域や、数日経ってある程度薄くなった潮になると、シーバスはその中を活発に回遊してベイトを追いかけ回します。

もう一つは高度成長期に汚れに汚れきった東京湾の遺産、湾奥のほぼ全域に沈むヘドロです。もともと有機物が嫌気性腐敗した黒くて重く、粘度が高い泥状の物質です。表面は少しずつであるが微生物によって生物分解されていて、軽い沈殿物質となっています。 そして運河などで大雨が降った後にその軽い沈殿物が巻き上げられて発生するのが灰色の濁りです。

この俗に言う“ヘドリーな”状態になるともうお手上げに等しいです。硫黄のような臭気がします。

他のエリアだと非常にチャンス大となる台風後の増水でも東京湾奥の場合、水が真っ白になってしまってハゼやカレイが酸欠で浮き、シーバスも深場へと避難していってしまいます。

こうなったらエリアを変えるか、そのヘドリーな潮の影響を受けない潮が動かないエリアに行くしかありません。

 

 

この様に海は様々な種類の濁りが常に混ざって潮というものを作り出しています。

常にベースとなるプランクトンの濁りと河川を中心に存在する茶色のササ濁り。これらが絶妙にブレンドされた場所にベイトフィッシュが群れ、シーバスが回遊するのです。

もちろん潮の濁りだけで全てが決まるわけではないので、まずはルアーを投げてみないことにはなかなかその日の状況が掴めません。

そこでその日の釣行場所を決めるにあたって僕の場合のセオリーがあります。それは釣行前数日間の雨の状況である程度エリアを絞るということです。

例えば総雨量(気象庁の地域別降水量による)10〜50oほどの通常の雨によって適度な泥濁りを発生させるのは江戸川と多摩川。常に濁りが安定していて比較的コンスタントに魚が出せるエリアです。荒川も同様に常に安定してササ濁りが続く素晴らしい河川ですが、意外と雨に強く、そう簡単には濁りを出しません。

埼玉県地方に総雨量80oほど振るとようやく泥濁りを確認することができます。

一方で都心を流れる隅田川。下流域に泥が堆積するエリアがほとんど無いために通常の雨くらいではほとんど濁りを出しません。しかし、1時間に10o以上の強い雨が降ると一気にヘドロを巻き上げてヘドリーとなってしまう。こうなったらもうお手上げです。月島「五平」でも行ってもんじゃをやけ食いしましょう。

以上の様に河川それぞれが持つ固有の現象を把握していると、釣行日数日前の雨の状況などから最適な釣行エリアを決定する判断材料になります。

これはあくまで各河川内の僕のポイントで得たデータなので全てがこういう風になるとはならないと思いますが、こんな感じでデータを集めていくのです。

 

 

 

光量

次に光量の話を書きます。

今までは濁りの複雑な相互関係を書きましたが、これに光量という要素が加えることで更に複雑なパターンをアングラー自身が組み立てることが可能になります。

例えば、潮が非常に澄んでいる日はなるべく水深があって暗いエリアでゲームを行うとか、逆に潮の濁りがきつい日はまぶしいほどのネオンがきらめくお台場のシャローなどでガシガシバイトしてくることもあります。

シーバスにはベイトを捕食する為に最適な水中の光量というものを選ぶ性質があります。暗くなれば明かりを求めて浅い場所に上がってくるし、光が明るければ暗がりに身を潜めます。その最適な光量はそれぞれの個体でばらつきがあって大きな個体ほど警戒心が強いからか暗い光量を好む傾向があります。

 

光を利用したメソッドの代表的なものとして明暗部の攻略法があります。攻略法の詳細は省きますが、シーバスは回遊するうちに明るいエリアから暗いエリアに潮が流れるポイントを見つけると、暗いエリアに入って待ち伏せし、明るいエリアから流れてくるベイトを捕食する性質があります。

この性質を利用してシーバスがいるだろうポイントに明るい側からルアーを泳がせていくと明暗の境目でバイトするというものです。

この性質が最も顕著に出るのが河川の橋下だと僕は思いますが、他にもたくさんの応用例があります。

例えばワンドのシャローなどでは潮が動かない岸際の水が澄んで、その外側に適度な濁りの入った潮が流れるのが常ですが、この際にも明暗部のパターンが立派に成立します。シーバスはブレイクラインギリギリの濁りのある潮から澄んだ岸際の潮を意識しています。シーバスは本当に捕食に関しては知恵のある魚で少しでも捕食しやすい条件を作るために濁りの境目で生じる明暗の差でさえも利用しているのです。

また、非常に強い濁りの時は日中でも立派にゲームが成り立ちます。濁りによって深く潜れば簡単に最適な光量を常に得られるからで、水平にできる光の明暗を使って上を泳ぐベイトに飛びかかることができるからです。この場合、ストラクチャーから大きく離れた場所でもヒットしてくるので驚く事が多いですが、水深3m以深は全て闇という状況が理解できれば納得いくでしょう。赤潮の時の穴撃ちデイゲームで全く反応がない時、思いっきりボートの下に出ている時があります。魚探に映ってる(笑)

この光量。セイゴやフッコが好む光量とスズキが好む光量は全く違います。

それぞれがどんな光量かについては僕の貧弱な文章力では表現できません。スズキに関してはギリギリ新聞の文字が読める光量のもうちょい薄暗い感じなんだけど、これもまた個人差があるので難しい問題です。バイトがあった時にしっかりとその時の状況を頭に刻み、経験を積んで覚えていくしかないでしょう。

この経験を積むと明かりが灯る単発ストラクチャーがあった際とかに潮の濁りと光量、流れの3つの要素でシーバスがステイしている場所をセンチ単位で絞り込むことが可能になってきます。

特に大型は一番良い場所に付いているので、一発目でスズキ級を掛けることも可能になるのではないかと思ってます。

 

 

 

潮位  

潮位とは海水面の高さのことです。地球と月、太陽の間に働く引力によって、満潮の時には潮が満ちてきて潮位が高くなり、干潮の時には潮が引いて潮位が低くなる。みなさんとっくにご存じだろうこの現象。この潮位がシーバスに与える影響は計り知れません。

潮位によってポイントに魚が出入りしたり、潮位差によって生じる流れによってシーバスのヒットパターンが形成されたりするのです。この潮位ですが地方差が非常に激しいのが特徴です。ちなみに潮周りは日本全国一緒なので、大潮の日はどこでも大潮です。

しかし、潮位となると大きく違ってきます。同じ日でも1日の潮位の差は九州西部で約3mもあるのに、日本海沿岸では約20cm〜30cmしか無かったりします。

僕のホームである東京湾奥は年平均で約1.5mもの潮位の上下動を繰り返しています。大きい時で2m程度。

佐賀県の湾部では潮位差が5mを超えると聞きます。ここまで来ると東京湾奥の僕では想像も付きませんが、さぞ力強い流れを生み出すのではないでしょうか。

 

僕が思うに潮位差が大きいエリアに住んでいるアングラーはシーバスを狙うといった面では実に恵まれています。 潮位差は必然的に流れを作り出します。雨が降らなくても川は潮位差が生じれば流れを作ります。その流れを利用してシーバスはベイトフィッシュを捕食しようとします。

 流れがあればあるほどシーバスの活性は高まります。

 

そして潮位差による流れは他の要素が作り出す流れよりもはるかに力が大きいのです。よって潮位差による流れだけでゲームマネジメントを組んでも魚を得ることはたやすいでしょう。

そんな訳で潮位を知る事が非常に大事であるとご理解いただけたでしょうか。

通常、潮位を知るには潮時表やタイドグラフといったものを利用します。

シーバスフィッシングをきちんとやる人でこれらのものを持たずにゲームする人はまずいないでそう。

 

 

ここまでは当たり前。こっからがヘビカバの真髄。心して読むべし。

そのタイドグラフに記載されている潮位。これはあくまで予想値です。

予想ということは実際の潮位とは誤差が生じることがあるということです。

シーバスに限らず、魚類のほとんど様々な要因で潮位に誤差が生じることを知っています。その日にどこまで潮が引くのか、満ちるのかを知ることができるようです。干潟や浅瀬などで潮が引いた時にハゼやカレイの稚魚、アカエイなどが潮だまりに残されるということが滅多にないことからも想像できるでしょう。

そして予想潮位差よりも実際の潮位差が大きくなる日に異常な活性の高まりを見せる性質があります。

反面、予想潮位差よりも潮が動かないとなると全く活性を上げません。

それは、小潮より大潮の方が潮の動きが大きいので、大潮の日の方が魚は釣れるといった海の釣りにおける王道のパターンすらもあっさりと覆すほどなのです。時に起きる長潮の日の大爆釣などのデータを冷静に分析すると潮位の誤差発生によるケースが最も多いことが判明しています。

そして、その誤差を読み切れるようになるとゲームにおいてシーバスを手にする確立がグンと高まるようになります。

 

 

それでは潮位の誤差はどんな要因から起こるのか。

 誤差の原因として考えられるのは5つ。

一つは最も影響が大きい「気圧」。一般的に気圧が低ければ低いほど潮位が高くなります。

1hPaで約1センチの潮位が動きます。例えばそれまで1,050hPaだったところへ中心気圧が950hPaの低気圧が来ると、潮位が約100cm高くなります。

要するに 高気圧に覆われると予想潮位より潮位が下がり、低気圧が通過する時には潮位が上昇するのです。 スズキは雨の前に喰いが立つという説がエサ釣り師の間では定説ですが、これも気圧の低下による水位上昇がもたらす潮位誤差が影響するものと考えられます。

例を挙げてみましょう。

これは海上保安庁水路部が発表した1999年9月24日の門司における潮位データです

この日は台風18号の接近により気圧が猛烈に低下。968hPaを記録した時には潮位372aを記録しました。グラフを見ていただければ、いかに潮位に誤差が生じたか解っていただけるでしょう。

 

二つ目に風によるもの。みなさんご存じの通り、風が吹くと波が立ちます。これが沖から海岸に向かって吹くと、波は海水を伴って海岸に吹き寄せられて「吹き寄せ効果」と呼ばれる海岸付近の海面の上昇が起こります。この風による水位の差は意外と侮れません。

風速が2倍になれば海面上昇は4倍にまで膨らみます。

特に東京湾のような閉鎖的な地形の海域ではその現象が顕著に出てきます。奥ほど狭まる地形が海面上昇を助長させるように働き、さらに海面が高くなります。

東京湾は南側が開いているために南風が吹くと水位が上昇し、北風が吹くと水位が低下します。2000年の9月に台風15号が東京都心部を直撃、まさに中心が23区を通過しましたが、その際、台風の南側に位置する東京湾内には風速25m以上の暴風が吹き荒れました。高波は東京灯標で9mを計測、中央防波堤南岸壁やディズニーランドの岸壁を乗り越えました。今でもあちこちに当時の傷跡があります。

他に伊勢湾や大阪湾などもその典型です。 もちろんその地域特有の風を無視してはいけません。また、湾だけでなく伊豆半島東岸などでは東の風が吹くとやはり水位が上昇します。

たいていは潮位の誤差は気圧と風が組合わさって発生することが多いと思っていればいいでしょう。普段はこの2つを頭に入れて釣行していれば十分だと思います。

 

 

一応参考までに三つ目は黒潮。黒潮は地球を流れる巨大な潮流。その黒潮が日本沿岸付近を通ったり、反転流などを巻き起こしたりすると水位が上昇します。その差は30〜80a程度で一度そうなった状態になると数週間続きます。

特に黒潮の接岸が始まる初夏にこの現象は多いようです。新しいもので00年6月はこの黒潮による異常潮位がありました。満潮時は運河の各水門が閉まってしまい、ちょうど沖に出ていた僕のボートは入れないまま2時間待つはめになったことがありました。

四つ目は水温です。これは日々の変化の中では微々たるものですが、水温が上がると水は熱膨張し水位が上がる性質だというぐらい知っておけばいいでしょう。夏は水位が上がり、冬は下がる。まあ数pの誤差です。気にしないでいいでしょう。これに対してシーバスが特有の反応を示したデータは確認できていません。

 

最後に川の流れ。雨が降れば川の流量は増して河川内の水位が上昇します。これに対して海と河口域の水位の差が少ない海や、上げ潮時などでは河川水が流れ込めずに押し上げられて河口付近の潮位上昇につながることがあります。これも知ってりゃいいです。

 

以上、五つの潮位の誤差を生み出す現象を書いてみました。

そして大事なのはこれらのデータを実際のゲームにどう生かすかということです。

 

基本となる考えは2つ。

満潮時に潮位が予想より高くなるエリア、干潮時に潮位が予想より低くなるエリアを絞り込むことからはじめます。

例として秋の大潮の干潮周り。東京湾の潮は夜に大きく引きますが、これに大陸の高気圧が張り出して冬型の気圧配置になると、北風が吹く日が多くなります。こういった日は普段よりも潮位差が数十センチ大きくなります。いつも以上に干潮時の潮位をより下げるからです。

特に河川内では下げ潮時にシーバスの活性が以上に高くなります。明暗部の大爆発などもこういう日が多くなります。潮が大きく動く時間や動かない時間を知ってそれを生かせるようになると強いです。

もう一つ。誤差を含めて潮位の予想ができるようになるとウェーディングゲームの際に魚の付き場や回遊ルートが読みやすくなります。

例えば東京湾。冬になって強い冬型の気圧配置になると一日中北風が吹き荒れる。 こんな日は大潮の満潮は夕方に訪れるが、いつもよりも満ちてこない。しかし、深夜の干潮はいつも以上に潮が引くのです。そうなると魚がシャローから出ていく時間が早まったり、普段狙うブレイクよりもう一つ沖のブレイクが回遊ルートになったりします。

更に同じ誤差でも時間の誤差も発生します。潮位が予想よりも高く推移していれば下げ潮時の時合(最も潮が大きく動く時間)は数十分早めに訪れます。逆に潮位が低く推移していれば時合は遅くやってきます。

 そしてシーバスはこれらの事象を全て知っていると断言したい

いや、潮の誤差を感知していると言うべきか。

残念ながらそれを証明する術はありません。しかし、彼らは潮位が数センチ動くだけで行動を変えるのです。感知しているとしか考えられない行動をします。

フィールドに立って潮を見る時には忘れずにいたいものです。シーバスは全て知っていると。

 

しかし、長いねぇ。

まだあるんですよ、これが。

 

 

 

 

潮周り

 

潮周り。釣り人の間で大潮や小潮と呼ばれている名称のこと。大潮に潮が良く動き、長潮や小潮の日に潮が動かないということはみなさん十分承知でしょう。

そして大潮の日に良く釣れて長潮の日などはあまり釣れないというのが釣り人の間では通説になっています。 しかし、僕のホームグラウンドである東京湾奥。僕が過去に蓄積した膨大な数のデータを徹底的に検証した結果、潮周りによる釣果の有意な差はありません。

なぜ無いのか。その話をする前に僕のデータフィッシングの話から始めましょう。

現在の僕は全く釣行記録のデータを取っていません。

しかし、16歳の時に初めてから25歳の頃までずっと詳細なデータを取っていました。データは年を重ねるごとに、より細微な項目まで追加され、潮周りはもちろん、気温・水温・風向き・風速、最後は塩分濃度やPHまでをも計測したデータを何年間も蓄積してきました。塩分濃度計などはどんなものを買ったらいいか判らないので、わざわざ神田の科学機器メーカーにペットボトルに入れた海水を持っていって試しに計らせてもらってから購入したほどです。

 

そしてその結果、僕はデータを取ることをやめました。

結論として出たものはデータはデータ以上のものにならないということでした。

水温にしろ、塩分濃度にしろ、pHにしろ、決定的な釣果の差を生み出す要素は全くなかったのです。もちろん潮周りもそうでした。

釣果のカギを握る最後の答えはいつもフィールドにあったのです。

 フィールドを見なければ何も始まらない。

そう気付いた時にデータを取ることをやめました。

 

誤解される前に書いておきますが、これはデータを取ることを否定するものではありません。僕は自分が取ってきたデータで潮と風のバランス、水温と濁りの因果関係など豊富な知識と知恵、様々なパターン、そして揺らぐことのない自信を手に入れました。

反対にこれから本気でこの釣りを始めていこうと思う人はぜひデータを取っていくことをお薦めします。

話は反れましたが、長年かかって導き出した答え。

「釣果は潮周りに影響されない。」

思えばここまでの結論に到達するのにずいぶんと月日がかかりました。その話は長くなりますが幸いHPはスペースに恵まれています。

その点について書いていきましょう。

 

まず大潮の日はなぜ良く釣れるのでしょうか。その答えとして3つの要素が挙げられます。

一つ目は潮汐による流れ。沿岸の魚は潮の流れの速さに比例して活性を上げるという特性を持っています。ベイトフィッシュもシーバスも例外ではありません。となると、大きな湾状の形状をする地形などでは大潮の日になると、大きな潮位差が生じて大きな流れが生まれます。必然的に魚の活性も大きく上がり、釣果が上がるという傾向があります。

特に顕著に見られるのは潮の効きがそのまま釣果と連動しやすい沖の釣り。乗合船のジギングなどがそれにあたります。

また、外洋に面したサーフや磯などではあまり潮汐による流れが発生しないことからか、あまりこの傾向は見られないような気がします。

 

次に潮位。大潮の日は最も満潮時の潮位が高くなります。シーバスは潮位が高くなるとより岸際に向かい盛んに捕食を行う生態を持っています。これは港湾部でもサーフでも磯でも変わりません。岸際に近づくということはアングラーとの距離が近くなるということ。潮位が高いときほど1投目からヒットなんていうことがあります。

基本的に潮位が高ければ高いほどイージーにルアーにバイトする魚が増えます。

ですから 港湾部などでは、潮位が高くなると岸際のストラクチャーに定位して待ち伏せ型の捕食形態を行う個体が多くなります。彼らの特徴は非常に高い活性の高さを持つことと水面近くまで浮いているということです。一時的な居付き型になった彼らを獲るのは極めて簡単です。目の前にルアーを通すだけです。ルアーは何でもいいです。信じられないかもしれませんが、経験したことのある人はなんとなく解ってもらえると思います。 おそらく初心者が最も釣りやすいシーバスはこの魚でしょう。

 

しかし、潮周り表を見てもらうと解るが、大潮の日の満潮は夕暮れ時と概ね同じ時間です。会社が終わって家に帰って準備をして、とのんびりしているとポイントに着いた頃には、潮もすっかり引いて魚の気配すら無いというパターンに墜ちます。逆に港湾部の大潮ド干潮は最悪です。冬はどうしてもそうなっちゃう、 そこでクローズアップされるのが後中潮です。

みなさんも、大潮の後の中潮が狙いやすいという話を聞いたことがあると思います。通常の社会人が帰宅した後に竿を振る時間、だいたい20〜22時に満潮時刻を迎えること、潮の動きが大きいものの大潮の日ほど早く動かないので初級者が魚と遭遇しうる時間が長いこと、などの特徴があるので最も釣果が伸びる日となりやすいのです。まさに現代生活における最高の潮周りとも言えるかもしれません。

しかし、この後中潮というパターン。簡単すぎてつまんない。僕が思うにこれほど安易で貧弱なパターンはありません。

こんなパターンで出る魚に頼っているようではダメです。

やがて小潮の日や長潮の日に出せる魚を出せなくなる恐れがあります。

最初に書いた通り、最も潮が動くのは大潮です。

時間的な制約はありますが、満潮時刻の浮いた魚を狙うだけならば大潮の日の方が圧倒的に釣れるはずです。

しかし、後述する小潮周りの攻め方を覚えていけば、やがてこの時合に簡単に釣れてしまう魚に価値を見いだすことは難しくなります。

 

 

最後の理由はポイントの特性です。

大潮の日は最も潮位が低くなる日でもあります。この最も潮位が低くなった時のファーストチャンネル、すなわち絶対に水が無くなることのないチャンネルは大型シーバスの回遊ルートになりやすいのです。 普段の潮位では干潟の広範囲を回遊し、イマイチ狙いを絞りきれない回遊型シーバスを干潮時に狭くなったミオ筋などの回遊ルートなどで狙い撃てば数も型も狙えます。

これは潮が大きく引く日しか狙えないポイントと言えるでしょう。

 

以上、先に書いた3つの要素があるから大潮の日は釣れるのです。

それではその条件が得られない小潮や長潮の日にどの様な考え方で魚を狙っていけばいいのか。

 

答えはシーバスフィッシングの基本に忠実になることです。

そう、流れを探すべし。

 

例えば長潮の日。潮はいつもより動かない。でも魚は捕食活動をしないわけじゃありません。

そんな日だってベイトフィッシュを探して行動しています。その捕食活動に利用する潮の様々な要素の一つ、最も簡単な潮汐による流れが消えただけで魚を見失ってはダメです。

魚は潮の流れが利用できなければ他の要素で生じた流れを利用して捕食しています。

人間が見つけるよりはるかに早く彼らはその時々の最も速い流れを見つけだしているのです。

そしてその流れを利用して捕食態勢に入っています。

その一つが風によってできた流れ。

潮周りの悪い日は風というキーワードで魚を追えば簡単に魚を出すことができるのです。

潮が全く利かない分、風の流れに顕著に反応する魚たち。むしろこのように潮が動かない日に強い風が吹いていれば風という要素に全ての魚が動きを左右されます。長潮・小潮の日に起きる大爆釣のヒントはここにあります。

 

他にも川の流れや排水周りなど潮の動かない日に狙うべきポイントはたくさんあります。

以上、簡単ですが潮周りによる特徴や傾向を書いてみました。

 

 

 

塩分濃度

 

海はしょっぱいですな。それは海水に塩が溶けているからです。

沖合の海洋の塩分濃度は約3.5%。東京湾奥の場合3%前後。河口付近では2〜3%です。

海の生物は人間が考えている以上に塩分濃度に対して敏感です。

例えばアサリ。実際に潮干狩りをして砂を吐かせようと家で海水を作ったことのある人はよくご存じだと思いますが、アサリが元気いっぱいに活動する塩分濃度の範囲は狭いです。2.5〜3.5%ぐらいの範囲でしか活動しません。それ以外の塩分濃度では殻を固く閉じたまま動かない。河口にいるくせになぜか淡水に弱いのです。アサリもカキもそうです。

余談ですが、台風で真水がドッと出るとアサリもカキも大量に死にます。アサリはいいんだけど、カキはそのまま殻が残るのでラインブレイクが増えるようになります。

もちろんのことながら魚も急激に塩分濃度が変わると弱って死んでしまったりします。 稚アユの遡上やシーバスの遡上もこの塩分濃度という要素無しには全く語れません。

彼らは体内の塩分濃度を少しずつ変えて体を慣らしながら遡上をしたり降海したりするのです。初夏に河口付近まで降りてくる手長エビやカニ類なども、もしかしたら塩分濃度に左右された行動形態を取っているかもしれません。たぶん違うと思いますが。

 

この塩分濃度に僕が着目したのは96年の頃でした。当時、河川中心のゲームを行っていた僕は、上げ潮時に川底を流れる塩分濃度の濃い潮、いわゆる塩水くさびについて徹底的に研究していました。

基本的に塩分濃度が濃いと比重が重いためにそうでない水の下に潜ろうとする性質があるのですが、この塩分濃度を把握することで河川内のシーバスの動きが追いかけられるのではないかと思って塩分濃度計を購入し、沖合からドブ臭い運河まであちこちの海水の塩分濃度を調べまくったのです。

しまいには中層や底層の塩分濃度も測るために専用の採取道具まで揃えて河川内の中層や底層の塩分濃度を調べた結果、湾奥の河川にも塩分濃度の異なる水の層が明確に存在していることがわかりました。

これをダイビング用語を用いて表せばハロクラインと呼びます。

夏に短パン&ビーサンでウェーディングをしているとわかるが、下げ潮時、常に底に非常になま暖かい水が差し込んできます。通常は水温の低い水が底の方に貯まる性質がありますが、この場合全く逆です。河川水の方が水温は低いものの塩分濃度が薄いため、そういった現象が起こるのです。この水の層は塩分濃度と水温が密接に絡まり合ってできあがります。

また、ここ近年遡上量が増えてきた東京湾の稚アユ。

 

彼らは少しずつ川を上っていきますが、その動きは完全に塩分濃度が支配していると思われます。基本的には上げ潮の時に川の底を海水が流れていくのに便乗して川を遡上します。その動きが大きければ大きいほど彼らは大きく遡上するし、その動きがかき消される状況であれば彼らは動きません。

反対に下げ潮の時間は自分たちが慣れている塩分濃度があるのか、少しずつ川を降りたりもするようです。そうして日に日に体を淡水に慣らしながら遡上をしていくのす。

 

こうして色々と塩分濃度について調べていくうちに僕が着目したのはそのハロクラインの境目、いわゆるエッジをシーバスが捕食に利用しているかどうかでした。

これは結論から先に述べましょう。シーバスは間違いなくこのエッジを捕食に利用しています。

特に夏の河口部、ストラクチャーや明暗部に着くシーバスはそのステイする水深の基準を明確にこのエッジに合わせてきます。塩分濃度の高い下の層にステイして塩分濃度の薄い層を流れてくるベイトを待っているのです。このエッジの存在を把握することでゲームにおいてはかなりの好成績が収められるようになります。

 

これまた余談ですが、湾奥五大河川のひとつ旧江戸川。流域が短いことと、水門があるために自然の摂理がいまいち通用しない河川の一つです。水門は水門上流側に塩分を入れないという前提で稼働するために、上げ潮で閉まり、下げ潮で開きます。 また、降水量次第で全く開かない日や大きく開く日など人間の都合で河口に供給される真水の量が変わることが特徴です。

逆に言えばここ数日間の天気と潮周りさえ把握しておけば、極上の真水を放水してくれるのが保証されているポイントでもあります。雨の後の大潮周り。下げ潮でその他諸々の条件が整うと、表層に非常にきれいなハロクラインが出現します。そんな時はトップウォーターゲームが面白いもんです。うはうはのデイゲームが楽しめます。

ここまで踏まえた上でハロクラインの存在を認識してゲームを組み立てると逆にこれほど簡単な河川もありません。

ところが、自然というのはそんな甘い話ばかりではないです。

このエッジ、ちょっとした条件ですぐにうやむやになってしまいます。

例えば河川の下げ。他の要因がなければ塩分濃度の薄い河川水は表層を流れていこうとします。 ところが、風が海側から吹き付けると表層の水は押し戻されるような格好になってしまい、塩水くさびの形が崩れ出します。そうなるとハロクラインのエッジは緩やかなものになり、シーバスはそのエッジにつかなくなるのです。

この場合、シーバス自身ももっと捕食しやすい条件を求めて回遊していってしまいます。

つまり、明確にハロクラインが出現する条件は潮の流れと風の向きが同じということになります。覚えておくといいでしょう。

 

次に荒川放水路の場合。その曲がりくねった流域は川の流れの方向と風の方向がポイントによって全く変わってくることを考えなくてはいけません。

その為に河口付近で流れと風の向きが反対の日でも、上流のポイントによっては流れと風の向きが一緒になるので、ハロクラインが明確に出現します。荒川のシーバスも1回の潮の上げ下げが行われる間にかなりの距離を移動していると考えられます。その移動中に最も捕食がしやすい何らかのエッジを探している。そんな考えを持って僕は荒川でのゲームに挑んでいます。僕が最近になって荒川中流部を開拓するのも、北東風や南東風など、河口部がいまいちになる日にいいポイントを探すためです。

 

更に東京湾奥全体で見た場合、東に河口が開いた多摩川と南に開いた荒川では全くその日の状況が変わってきます。

その2つの違った顔を持つ川が首都高でわずか10分の距離にあるのです。そんなことも考えてゲームマネジメントを行うと東京湾奥のシーバスフィッシングは更に楽しくなります。

ちなみに様々なフィールドでありとあらゆるパターンで魚を釣るとシーバスフィッシングにおける明確なパターンが見えてきます。

 

それはシーバスという魚はエッジを常に意識しているということ。

流れや水温、塩分濃度、濁りが作り出すエッジ。これらは常に異なる状態の海水同士がぶつかる場所です。そのエッジこそ、常にプランクトンが沸き上がりベイトフィッシュが集まるということを知っているのでしょう。

ストラクチャーでのゲームを考えた場合も警戒心から身を寄せるという魚の性質もあるでしょううが、その基本的な本能として流れの変化を使った捕食がしやすいから、という考え方もできます。

そして海の中のそのエッジを知るために人間は考えられる限りの要素を把握し、その違いから海中のエッジを探り出していくのです。

ここまで書いておいてなんですが、塩分濃度をわざわざ測ることは無いと思います。

しかし、海を知る上でこれほどの早道もなかったように思います。

僕が使っている塩分濃度計を購入するのもいいですが、そこまでしたくはないでしょ。

 

そこで、まず釣り場についたら海水を舐めてみること。運河の潮だって少しずつ舐めたぐらいで死にはしません。

キャストして回収したルアーをペロッと舐めてみる。できれば1時間おきに。

時合が来たと思った時にペロッとやるのもいい勉強になります。その時のしょっぱさを覚えて積み重ねていくだけでも多くのことの気付けるでしょう。

 

 

しかし、長い文章というのは・・・

悪趣味な事を覚えたもんです。

 

 

水温

 

どんな魚にもそれぞれの適水温というものがあります。スズキは12〜24℃ぐらいの間で最も活発に動くような印象を持っています。東京湾においてこのあたりの水温になるのは春と秋に多いですね。シーズン的なものもあるのでしょうが、とにかくこの水温帯のシーバスの活性はすこぶる高いです。

東京湾奥は真冬に5℃、真夏に30℃と、非常に幅の広い水温変化が起きるエリアです。

僕の実際の釣果データから見ると水温5〜33℃までの間で魚をキャッチした実績があります。最も多く魚がヒットしているのは15〜20℃の水温域です。 スズキは他の魚以上に水温の変化に弱い様です。急激に変わるたった3℃の変化に全く対応できていないと思える時がしばしばあります。

それでは10℃以下25℃以上の水温ではどうでしょうか。

まずは水温10℃以下の場合ですが、これは厳しくなるもののゲームとして成り立たないということはありません。せいぜい5℃まででしょうか。それ以下は少し厳しいのですね。

実際に5℃の時に釣ったこともありますが、この数値はあくまで人間が測定した水面付近の水温です。海の中はそれ以上に高かった可能性が高い、と考えています。

ちなみに 冬場の温排水はスズキの好釣り場ですが、これについては水温よりも流れとベイトの要素が魚を寄せる要因になっていると考えています。

一方、27度を超すと魚の反応は途端に鈍くなってしまいます。捕食活動を起こすのは30℃くらいまでではないでしょうか。それ以上の水温になる時期が東京湾でもありますが、そうなるとなかなか口を使いません。

しかし、それも水温によるものなのかは微妙です。溶存酸素量による可能性も高いですから。 事実、台風などの暴風が吹き荒れると彼らは口を使い出します。水温はせいぜい1〜2℃下がる程度だけど、波が空気を巻き込むだけで荒食いが始まる様は、高水温だから口を使わない、という概念を十分に破壊するだけの事実です。

 

僕は以前に週刊新聞に連載を持っていた時は、毎回かならず水温を測っていましたが、今は計っていません。

それは、水温という要素が釣り人にとって簡単に逃げ道になってしまうことを知っているからです。

急に2℃も水温が下がったからダメとか、上がったからダメとか、そういう考えは一切持たないことにしているのです。

よくいるでしょ、「水温が28℃もあっちゃ釣れないよ。」、なんて言う人。こういうのはデータフィッシングとは言いません。

 

底物釣りの遊漁船が使う釣れない時の最も多い理由が水温の急変です。まあ、これは回遊しない底物だけに致し方ないところもあるでしょうが、自由に回遊するスズキを狙い、ポイントを変えることもできる陸っぱりのシーバスアングラーがこれを言っちゃおしまいです。シーバスフィッシングは反応が悪いと思ったらあれやこれや試すことができる釣りです。そして一見どうにもならない状況をたった一つの発見やアイディアで覆すことができる釣りです。だから面白いし、これだけ人気が出たのです。

言い訳を考える暇があったら、どうにかできんか考えろ。

 

夏に海水浴や巣潜りをしてサザエやアワビを獲っていると、表層のわずか数十pが非常に暖かい潮で、足下の潮はひんやりとすることがあります。というか、これが日常的なんです。

潮は常にこのサーモクラインを持っています。

岸から風が吹けば冷たい底潮が出て、沖から風が吹けば表層の暖かい潮が押し寄せる。 それをアングラーは水温計わずか1本、しかも自分の足の下1ヶ所で判断しようとします。いったいこれで何が解るというのでしょうか。 もちろんデータを取ることを否定する訳ではありませんが、僕自身が何年間もデータを取ってきて出した結論がこれなのです。

僕の場合、水温による魚の動きは至近の数日間における気温の変化で判断しています。自分が暑さを厳しく感じていれば、海の水温も上昇しているだろう、とか急に冷え込んだな、と感じれば水温も下がったかなとか。その傾向を踏まえるだけでゲームに挑んでいます。

 

 要するに水温の上下に振り回されちゃダメと言うことです。

 

 

 

 

溶存酸素

 

水温が上昇すると、水の中の溶存酸素量は減少します。大事なことはそれだけ。

逆のケースは気にしません。水温5℃で溶存酸素量がタップリだからバクバクだったよ、とかそういう話は考えてはいけません。

 問題は溶存酸素量が極端に減少した時です。水温が上がると、プランクトンの活動が活発になります。プランクトンの中には光合成によって酸素を生み出す植物プランクトンと、植物プランクトンを食べながら酸素を消費する動物プランクトンがいます。これらのバランスで水中の溶存酸素量は激しく変化しています。 一般的に川の水がたっぷりと入るところは植物プランクトンが多く、川の栄養が途絶えて植物プランクトンの活動が低調になると動物プランクトンが幅を利かすと知っておけばいいでしょう。

アングラーとして考えた場合に大事なのは、まずは酸素が潮に供給される場所を見つけることです。

酸素の供給は植物の光合成による生成の他には空気中の酸素が海に攪拌されて溶けることしか考えられません。 それは風による波、雨粒の水面への衝突時、排水などの流れ込みなどです。

しかし、なんと言っても溶存酸素量が・・・、と息苦しくなるような話が出てくる時期は川筋が圧倒的に強いのです。

素直に川筋でゲームを組み立てる方が簡単です。 ちなみに、シーバスは水温が上がると体温もあがり代謝活動が大きくなります。すると、体が必要とする酸素量も増えるのです。

特に大型魚ほどこの傾向が強いです。やはり、真夏は大型狙いの川筋が面白いのではないのでしょうか。

 

 

 

水圧

水圧というのはさほど魚をヒットさせるまでにおいて重要ではありません。 知っておいた方がいいのは、1つだけ。

水深10m以深より深いところから持ってきた魚は水面でリリースしてもひっくり返ってしまいます。なので、なるべく短いファイトでランディングし、元気なうちにリリースすること。

泳いでまた自分がいた泳層まで潜っていけて初めてリリースが成功したと考えられます。

 

 

総論

以上、潮を司る要素を紹介してきました。

これらの要素を左右するサブファクターを入れるとあらゆる自然条件が全て最終的に釣果に関わって来るということはご理解いただけたでしょうか。

もちろんこれらの項目を知らなくてもスズキという魚は日本中にたくさんいるから簡単に釣れてしまいます。だからこの釣りの奥は浅いと思っている人がいるがそうではありません。

そう思う人が捕れない魚がごまんといるのです。そして、その捕れない魚を捕ることができる人がいます。

 

 

その魚を捕っていくための要素なのです。

全て読んだ方ならお分かりだと思いますが、結局このヘビカバスタイルのゲームマネジメントは勘でもデータでもなく、ましては行き当たりばったりでもありません。 最終的にアングラーが経験を積んで肌で覚えた感覚こそが最後には生きてくるのです。

その感覚を研ぎ澄ましていくために知っておいた方がいいことを書いてみました。

決して鵜呑みにするのでなく、あくまで知識として参考にし、自分の感覚に組み込んでいく。

そのプロセスを踏めば人の数倍以上のスピードで上手になっていくことができるでしょう

9割の魚を釣る、1割のアングラーになるための方法

でした。

 

 

 

余談

月の引力はシーバスの回遊や捕食・産卵など全ての活動を司る神の力です。

9月の満月。午前0時にほぼ真南に来るその月はシーバスに何を知らせるのでしょう。

シーバスは長い間受け継いできた本能で、産卵活動の準備をする時間が来たことを知るのかもしれません。

1月や2月の満月が午前0時に真南に位置するとき、どこかの海底に集まったシーバスは一斉に産卵活動を行うのかもしれません。

まだ全ては分かりません。

が、秋の満月が煌々と海面を照らす時に、僕はふとそんな事を考えます。

魚の影も無い月光の中で僕は毎年湾奥の秋シーズンの終わりを悟るのです。

 

 




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